追突事故の慰謝料相場と計算|いくらもらえるのかポイントと注意点 

交通事故

軽い追突事故は、誰でも被害者になる可能性がある事故類型です。

なぜなら、自動車を運転するときにどれだけ注意をしていたとしても、突然後続車両が衝突するという追突事故を避けることができないからです。

このように軽い追突事故に遭ったときにはいくらくらいの慰謝料がもらえるのでしょうか。加害者の保険会社から提示された慰謝料額が本当に妥当な金額なのか判断できない方も多いと思います。

そこで、今回は、追突事故で慰謝料をもらうときのポイント・注意点・相場について解説します。

なお、追突事故に巻き込まれた際には、むちうち症状を発症し、治療が長引くケースがあります。その際に、保険会社が慰謝料を提示するのですが、相場と比べて低い金額を提示しがちです。この場合、弁護士特約などを利用して交通事故に強い弁護士に相談する価値はあります。下記サイト等で確認してみてください。

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追突された!事故の被害者がもらえる「慰謝料」とは

追突事故の慰謝料についての基礎知識についてまず説明します。

慰謝料には、交通事故の場合、二種類があります。

  • 入通院を余儀なくされたことに対する慰謝料である「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」
  • 交通事故によって後遺症が生じたことに対する慰謝料である「後遺障害慰謝料」

追突事故のケースでは、主に、入通院慰謝料が問題となることから、以下では、入通院慰謝料のことについて説明していきます。

軽い追突事故の慰謝料はいくらもらえるか?|相場の計算方法

どのような精神的苦痛を被ったかは人それぞれですので、それを金銭相場に換算することは容易ではありません。感受性を基準に計算することは、同様の事故に遭った被害者の間で不公平な結果を招きかねません。そこで、交通事故の賠償実務においては、一定の基準を設けて慰謝料を算定しています。

具体的な慰謝料の算定基準としては、以下の三種類があります。

(1)自賠責基準

自賠責基準とは、交通事故によって負傷した被害者に対して、加害者の加入する「自賠責保険から支払われる補償額の基準」をいいます。

最低限の補償をするという制度上、自賠責基準は3種類の基準のなかで最も低い基準となります。

自賠責基準の慰謝料は、1日につき4300円とされており、実通院日数の2倍と通院期間を比較して、少ないほうに1日あたりの金額をかけた金額が自賠責基準の慰謝料額の相場となります。

たとえば、以下のようなケースで計算してみましょう。

例:交通事故によって、全体の通院期間が3か月(90日)、実通院日数が40日のケース

通院期間90日と実通院日数の2倍である80日を比較すると、実通院日数の2倍の方が少ないため「80日」が基準となります。

そのため、このケースの慰謝料金額の相場は、以下のとおりとなります。

計算式:4300円×80日=34万4000円

なお「令和2年4月1日よりも前」に発生した交通事故の場合は、1日につき4200円が基準となりますので注意してください。

(2)任意保険基準

任意保険基準とは、各任意保険会社が定める賠償額の基準であり、一般には公開されていないため、正確な内容はわかりません。

一般的には、自賠責基準と弁護士基準の間の金額であるといわれています。

過去には任意保険会社の支払い基準は、統一されており、その基準で計算されていましたが、現在では、任意保険会社独自で基準を設定しています。そのため、任意保険会社から提示される基準は、自賠責基準と同程度ということもありますので、安易に示談に応じないようにしなければなりません。

なお、旧統一基準による慰謝料額の基準の表で計算した場合、交通事故によって通院期間が3か月(90日)、実通院日数が40日のケースでは、慰謝料額は、37万8000円が金額相場となります。

(3)弁護士基準(裁判所基準)

弁護士基準とは、別名裁判所基準とも呼ばれるもので、過去の裁判例で認められてきた賠償額を基準に作成された基準のことをいいます。三種類の基準のなかでは最も高い金額の基準となります。

弁護士基準は、弁護士が被害者から依頼を受けて加害者側の保険会社との間の交渉で使用する基準であり、裁判になったときに裁判所が使用する基準です。

「民事交通事故訴訟損害賠償算定基準」という本に掲載されている算定表を基準に計算します。

算定表には、別表Ⅰと別表Ⅱがありますが、追突事故では主に別表Ⅱを使用しますので、以下、別表Ⅱの基準を示します。

別表Ⅱ入院1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月
通院356692116135152165176186195
1月195283106128145160171182190199
2月366997118138153166177186194201
3月5383109128146159172181190196202
4月6795119136152165176185192197203
5月79105127142158169180187193198204
6月89113133148162173182188194199205
7月97119139152166175183189195200206
8月103125143156168176184190196201207
9月109129147158169177185191197202208
10月113133149159170178186192198203209
11月117135150160171179187193199204
12月119136151161172180188194200
13月120137152162173181189195
14月121138153163174182190
15月122139154164175183

(単位:万円)

たとえば、交通事故によって通院期間が3か月(90日)、実通院日数が40日のケースでは、上記表より通院期間3か月が基準になりますので、弁護士基準での慰謝料額は「530000円」が金額相場となります。

三種類の基準を比較すると同じ通院期間であっても、弁護士基準をベースに計算する慰謝料が最も高額であることがわかります。

追突事故の慰謝料・示談金を請求をするときの注意点

追突事故の慰謝料請求は、基本的には他の類型の事故と同様ですが、追突事故特有の問題もあります。追突事故の慰謝料・示談金の請求をするときには、以下の点に注意してください。

(1)一定期間で治療費が打ち切られることがある

追突事故は、軽微な事故であることが多く、怪我の内容としても頚椎捻挫などのいわゆるむち打ち症と呼ばれる怪我を負うことが多いです。

加害者が任意保険に加入している場合には、事故後の治療費は加害者の任意保険会社が負担してくれますので、被害者が直接病院に支払うことはありません。

しかし、むち打ち症の場合、多くのケースでは、3か月から6か月程度で加害者の任意保険会社から「今月で治療費の支払いを打ち切る」などと言われ、治療費の支払が打ち切られることがあります。

治療の必要性については、本来は、医師が判断することですので、保険会社が判断する事項ではありません。そのため、保険会社から治療費を打ち切られたとしても、医師が治療の必要性があると判断しているのであれば、治療費は自己負担となりますが、通院を継続するのがよいでしょう。

被害者が自己負担した治療費については、事故との因果関係が認められるものであれば、後日保険会社に請求することは可能です。

保険会社からの治療費の打ち切りを受けて、治療自体を終了してしまう方も多いですが、妥協せずに治療を継続しましょう。

(2)整骨院での施術が認められないことがある

整骨院で施術を行うのは、医師ではなく、柔道整復師です。

整骨院では、病院と異なり、治療を行う場所ではないため、加害者の保険会社から施術の必要性や有効性を疑われ、整骨院での施術料を支払ってもらえないこともあります。

整骨院での施術料を請求するためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

①医師の指示があること
②医師の指示がない場合、施術の必要性、施術の有効性、施術内容の合理性、施術期間の相当性、施術費の相当性があること

そのため、整骨院で施術を受けるときには、主治医にその旨相談をして、医師の指示のもと利用するようにするとよいでしょう。

(3)後遺障害が認定されにくい

追突事故では、むち打ち症になることが多いですが、むち打ち症は、レントゲンやMRIなどの画像所見では異常が見つからない症状です。

そのため、むち打ち症は、他覚所見がなく被害者の自覚症状だけの症状だといわれています。

軽いむち打ち症であっても、後遺障害等級の認定を受けることは可能ですが、他覚所見のある他の障害と比べるとそのハードルは非常に高いものになります。自覚症状を裏付けるためには、症状の一貫性や通院の継続性などから立証していかなければなりませんので、病院への通院は定期的に行うようにしましょう。

(4)保険会社との示談交渉を自分でしなければならない

交通事故に遭ったときには、被害者が任意保険に加入しているときには、被害者の任意保険会社が加害者や加害者の任意保険会社との示談交渉を代行して行ってくれます。

しかし、被害者の保険会社が示談交渉の代行をすることができるのは、「被害者にも過失がある場合」で、被害者側の保険会社も加害者に賠償をする必要があるケースに限られます。

一般的に追突事故のケースでは、停止している被害者車両の後方から加害者車両が衝突するというケースですので、過失割合としては、加害者が100で被害者が0となります。

このように「被害者に落ち度がないケース」では、被害者側の任意保険会社は、示談交渉の代行をすることができません。

被害者自身が加害者または加害者の保険会社と示談交渉をしなければなりません。

最近の任意保険では、弁護士費用特約が付帯されていることが多いので、費用負担なく「弁護士に依頼」することもできます。そのようなときには、弁護士に示談交渉を依頼するのも一つの方法でしょう。

追突事故で慰謝料を増額させる2つのポイント

交通事故で肉体的にも精神的にも多大な負担を負った被害者としては、少しでも多く慰謝料を請求したいと考えるものです。追突事故で慰謝料を増額させるポイントとしては、以下のとおりです。

(1)定期的に通院をすること

慰謝料の基準で説明したとおり、交通事故の慰謝料は「通院期間」や「通院実日数」に応じて増えていきます。

痛みがあるのに我慢して病院に行かなかった場合には、最終的にもらえる慰謝料額が減ってしまいます。

さらに、仕事などでなかなか通院する時間が取れないなどの理由で、通院間隔が空いてしまうと、治療が終了したものとみなされ治療費が打ち切られてしまうおそれもあります。

慰謝料の算定や後遺障害の認定の場面で有利になってきますので、痛みが継続している方は、できる限り間隔を空けずに定期的に治療に通うようにしてください。

(2)示談交渉を弁護士に依頼すること

慰謝料の算定基準については3種類あることはすでに説明したとおりです。

そして、慰謝料の算定基準のなかでは弁護士基準が最も高いですが、被害者個人で保険会社と交渉したとしても弁護士基準で交渉することはできません。

弁護士基準で保険会社と交渉をするためには、弁護士に依頼してすすめなければなりません。弁護士に依頼するときには、弁護士基準で増額が見込める金額と弁護士費用とを比較してプラスになるのであれば弁護士に依頼するとよいでしょう。

なお、被害者が弁護士費用特約の任意保険に加入しているときには、原則として費用負担なく弁護士に依頼をすることができます。

この場合、弁護士特約などを利用して交通事故に強い弁護士に相談する価値はあります。全国の交通事故に強い弁護士を紹介する「交通事故弁護士相談Cafe」等で探して相談してみてください。

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まとめ

追突事故は、どんなに安全運転を心がけていたとしても避けることができない事故です。

被害者は、追突事故によって多大な負担を被るのですから、適正な賠償を受けなければなりません。

追突事故に遭い、加害者の保険会社から慰謝料を含む賠償額が提示されたときには、その金額が適正なものかどうかを弁護士に相談してみるとよいでしょう。

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