刑事事件の加害者から示談の申し入れがあったとき、本当は、厳しい処罰を受けてほしいけれど、示談しないと仕返しされるのではと怖い!やはり示談に応じた方がいいのかな……こんな風に悩んでいる人は多いのではないかと思います。
示談に関して、分かりやすく解説します。
この記事を読んでわかること
- 刑事事件は示談拒否してもよい
- 示談拒否しての仕返しは、ほとんどが杞憂で終わる
- ストーカー事件のような執着性の高い事件の示談は専門家に相談
刑事事件は示談拒否してもよい
刑事事件の示談は、単なる金銭賠償だけの問題ではなく、加害者の処罰を求めるかどうかの問題です。国家に、自分に代わって、加害者への制裁を加えてもらうかどうかを決める、極めて情緒的な判断を含みます。
たとえ肉親や家族であっても、決めることはできません。それができるのは、被害者だけです。「このケースでは示談するべき」などという客観的な判断の枠組みはありません。
相手に反省の色が見えず、刑罰を受けて反省を促したい!と思ったら、示談拒否してもよいでしょう。
また、謝罪の意思を示していたら、示談してもよいでしょう。
謝罪に関しては、次の記事を参考ください。「刑事事件の被害者へ謝罪文の書き方」。
加害者が知り合いで、今後が本当に怖い時
仕返しが怖いから示談に応じるというと、それはおかしいという意見が必ず寄せられます。しかし、現実に怖い思いをするのは、被害者本人です。特に、加害者側が会社の同僚、昔ながらの知り合い、親戚などで、刑期後また会う可能性がある場合は、本質的な不安になります。
仕返しが怖くて、外を歩くのも不安だ、示談して楽になりたいと願うことを非難はできません。ビクビクしながら暮らすより、示談し、きっぱりと事件を過去のことにしてしまったほうが幸せな場合も否定できないからです。
仕返しは、ほとんどが杞憂
ただ、刑事事件の示談に応じないことで、仕返しをされるケースは、レアケースです。加害者は、ただでさえ逮捕・勾留・服役で、生活が大変ですから、仕返しどころではないのです。その上、仕返しで、再度、重い刑を受けるのは割に合いません。恐怖は、たいていは杞憂に過ぎません。
刑事事件の示談に応じても、仕返しされるケースもある
しかし、ストーカーのように、被害者に対する執着心が強いケースでは、示談に応じないと、加害者をエスカレートさせる要因となることもありえます。
もっとも、このようなケースは、逆に、示談に応じても、加害行為が止むわけでもない場合が多く見られます。むしろ、示談したという安心感が行為のエスカレートをうむことがあります。
心理的な病にかかっている場合、示談に応じたかどうかは、加害者にとって、関心事ではなく、示談は防波堤になりません。
刑事事件の示談拒否が、仕返しに結びつくわけではない
こうしてみると、示談に応じたか否かが、加害行為の再発に関わっているのではないことがわかります。仕返しを考慮して、示談の諾否を検討するのは無意味です。となると、むしろ、示談に応じるかを離れて、どうすれば仕返しを抑止できるかを考えることが大切です。
双方の弁護士を通じて刑事示談交渉を行うことが必要
示談交渉は、成否にかかわらず、被害者の意見・考えを加害者に伝える、またとない機会です。仕返しを抑止するには、示談をする理由、示談しない理由、いずれであっても、被害者側の意見を相手に伝え、加害者を納得させることが必要です。
そのためには、交渉にあたり、被害者側も弁護士をたて、相手方の弁護士との協議を通じて、こちらの意思をきちんと伝えてもらうことが何より肝心だということです。