無断駐車で張り紙・通報された!|罰金・警告を無視してはいけない?

隣人トラブル

少しだけと思い、空いている駐車場に車を止めて、戻ってきた際に、「無断駐車につき1日当たり5万円の罰金をいただきます。」という張り紙をされた・・・という経験はありませんか?

この時、本当に罰金を支払わなければならないのでしょうか。

また、もしも警察に通報された場合はどのように対応すればいいのでしょうか。

この記事では、無断駐車をしてしまった場合の法律問題について、分かりやすく解説していきます。

無断駐車をしてしまったら、どのような責任を問われる?

まず、無断駐車は、駐車した土地が、公道が私有地かにより、責任が異なります。

公道で無断駐車をした場合の責任

駐車した土地が、公道の場合には、道路交通法第51条の4第1項が規定する「違法駐車」に該当し、これは犯罪に当たります。

(放置違反金)
<第51条の4第1項>
「警察署長は、警察官等に、違法駐車と認められる場合における車両(~略)であつて、その運転者がこれを離れて直ちに運転することができない状態にある(~略)車両の使用者が放置違反金の納付を命ぜられることがある旨を告知する標章を当該車両の見やすい箇所に取り付けさせることができる。」

街を歩いていると、ときどき車のフロントガラスに黄色い張り紙がされている車を見かけることがあるかと思います。

そのような車は「違法車両」として規制されたものです。

また、同条第2項は次のように、放置車両確認票章を剥がす行為が違法であることも規定しています。

<第51条の4第2項>
「何人も、前項の規定により車両に取り付けられた標章を破損し、若しくは汚損し、又はこれを取り除いてはならない。ただし、当該車両の使用者、運転者その他当該車両の管理について責任がある者が取り除く場合は、この限りでない。」

これらの規定に違反する違法駐車や放置車両確認票章を剥がす行為には罰金が科せられることとなりますので、刑事上の責任を負うこととなります。

「私有地」で無断駐車をした場合の責任

次のケースについて見ていきましょう。

<ケース>
私有地(月極の駐車場)に少しだけと思い、無断で駐車をしました。
用事を済ませ、車に戻ると警察官の姿と土地の所有者と思われる方の姿がありました。
また自分の車のフロントガラスには、「罰金●●●円」と書かれた張り紙がされています。

罰金を支払う必要はある?

まず、このような場合には、罰金を支払う必要はありません。

なぜなら、罰金の対象となる道路交通法第2条の「道路」に当たらないからです。道路交通法第2条は、「道路」を以下のように規定しています。

<道路法第2条>
「この法律において「道路」とは、一般交通の用に供する道で次条各号に掲げるものをいい、トンネル、橋、渡船施設、道路用エレベーター等道路と一体となつてその効用を全うする施設又は工作物及び道路の附属物で当該道路に附属して設けられているものを含むものとする。」

月極の駐車場の場合には、利用する者は、土地の所有者又は管理者と契約した者に限られます。そのため、「一般交通の用に供する道」とまではいえず、「道路」に当たらないからです。

したがって、このような場合には、罰金を支払う必要はありません。

無断駐車で張り紙をされた場合、その相手方の言い値で「罰金」を支払う必要があるのか?どれほどの賠償金を支払わなければならないの?

張り紙に「1日につき5万円の罰金」との文言があった場合には、その言い値で金額を支払う必要はありません。

月極の駐車場、店舗又はアパートの駐車場での無断駐車であれば、周辺の駐車場の料金の相当額を支払う必要があります。

裁判例では、近隣の駐車場の料金を確定し、相当額を認定していることが少なくありません。

1日で5万円もの高額を支払わなければならない駐車場は、ほとんど考えられませんので、いくら張り紙で金額を記載していたとしてもこのような言い値の金額を支払う必要はありません。

そのため、張り紙に「罰金●●●円」との記載があったとしても、罰金を支払う義務はないこととなります。

犯罪に当たらないし、罰金を支払う必要もないのにどうして警察官がいるの?

月極駐車場の所有者又は管理者は、自分の管理する駐車場で契約者以外の無断で駐車されている車を見つけると無断駐車をした方に直接話をされる方もいるようですが「警察へ連絡」される方もいるようです。

警察官としては、基本的には「民事不介入」という原則があるため、そのようなトラブルは当事者で解決してもらうようにする場合が多いですが、一方で「話し合いに参加する場合」もあるそうです。

また、警察官を呼ぶ理由としては、運転手が暴力団関係者などであった場合に大きなトラブルになり得るため、念のために通報する場合もあります。

もっとも、上記のとおり、このような無断駐車は犯罪にはあたらないので、警察官がいたとしても、罰金の支払いなどを命じられることはありません。

張り紙に、「警察に通報した」と記載されていた場合、その後どうなってしまうのか?警察から電話が来るのか?

上記に記載した通り、基本的には警察官としてはこのようなトラブルは当事者で解決するものです。

そのため、警察に通報されたとしても罰金を科せられたり、警察から電話が来ることは基本的にはありません。

無断駐車は民事上の責任がある

無断駐車をした場合には、損害賠償責任等を負うことがあります。

私有地などでの無断駐車は、犯罪にあたらず、罰金を支払う必要はありません。しかし、それはあくまで刑事上についてです。

他方、私有地での無断駐車は、民事上の損害賠償請求の対象となります。

具体的には、不当利得返還請求(民法第190条1項)ないし不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償請求がされるおそれがあります。

なお、「罰金」は公的な機関が私人に対し権限をもって科すものであるため、張り紙に「罰金」との記載があったとしても、文言としては不正確であり、正確には、「不当利得」ないし「損害賠償」との記載が正しいこととなります。

無断駐車の張り紙をされた。無視しても大丈夫?ナンバーを控えられていたら後でバレる?

ナンバーを控えられていた場合は後でバレる

無断駐車をされた私有地の所有者は、車のナンバーを控えることや写真を残しておくこともあるでしょう。
そういった場合は、後で何かしらの連絡が来るのか気になりますね。

まず、一般私人が控えたナンバーで、車の所有者の氏名及び住所を調べることができます。

運輸局(「陸運局」と言われることもあります。)で、車のナンバー(正確には、「自動車登録番号」といいます。)から、車の所有者の氏名及び住所を調べることができます。

※運輸局とは、運輸・交通に関する業務を所管している役所のことをいいます。

そのため、ナンバーを控えられていた場合には、後で氏名及び住所を調べられるおそれがあり、また住所に何かしらの書面が届くおそれもあります。

弁護士は職権で車の所有者の調査ができる

無断駐車をした場合には、私有地の所有者の中には、訴訟の提起を検討する方もいるでしょう。

その場合には「弁護士に依頼」する方が多くいると考えられます。

その際に、弁護士は車のナンバーから車の所有者を職権で調査することができます。

無断駐車をして張り紙をされた場合、どのような対応をその後とるのが適切か?

まずは張り紙をよく確認しましょう

既に解説した通り、無断駐車をした場所により、刑事上の責任があるのか、民事上の責任があるのかが異なってくるので、駐車をした場所や張られている紙をよく確認しましょう。

公道の場合

公道など、道路交通法が適用されるような場所に違法駐車した場合には、「放置車両確認票章」と書かれた黄色い紙が張られているでしょう。その場合には、法律に違反するのでその紙を破損し、汚損し又はこれを剥がさないようにしましょう。

この「放置車両確認票章」が張られている場合には刑事手続きとなりますので、罰金等を支払う義務を科せられるおそれがあります。

私有地の場合

「放置車両確認票章」が張られておらず、土地の所有者が張ったと考えられるような警告文(「1日5万円の罰金を徴収します。」などの文言の入ったもの。)が張られていた場合には、刑事上の責任はありません。

しかし、民事上の損害賠償責任を問われる可能性があり、このような場合には、土地所有者または所有者の代理人である弁護士から、書面が住所に届くおそれがあります。
書面が届いた場合には、弁護士に相談しましょう。

土地所有者と話し合う

少しだけの間であったとしても土地の所有者の権利を侵害していることは間違いありません。そのため、まずは謝罪し、事情を話してみましょう。場合によっては、責任を追及されることを免れ、注意程度で終わることもあるでしょう。

警察官への対応

私有地の問題であったとしても、警察官の姿がみえる場合があります。この場合には刑事上の責任を追及するためにいるのではなく、単に話し合いを円滑にするためにいるため、冷静に対処しましょう。

酷い張り紙の張り方は「器物損壊罪」に該当する

これまで解説した通り、私有地で無断駐車をした場合には、土地の所有者があなたの車に何かしらの警告文を張り付けることがあるでしょう。

この場合において、張り紙があまりにも酷い張り方によって、車に傷がついてしまった場合には器物損壊罪(刑法第261条)に当たる場合があります。

<第261条>
「前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。」

判例(大判明治42年4月16日)によると、第261条にいう「損壊」とは、その物の効用を害する一切の行為をいうとされます。
そのため、車の物理的な損壊でなくとも、「損壊」に当たるとされる場合があります。
車のフロントガラスに張られた張り紙を張ったことによる損傷はもちろん、剥がした跡が酷く広範囲に残ってしまう場合などには「損壊」に当たるとされる場合があります。

酷い張り紙の張り方は「損害賠償」もできる場合がある

また、あまりにも酷い張り紙の張り方により車に傷がついている場合には、不法行為(民法第709条)に基づく「損害賠償請求」をすることもできます。

もっとも、この場合において、過失相殺(第722条第2項)が認められ、損害額が減少することもあります。

<第722条>
「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」

過失相殺とは、被害者の「過失」を考慮して損害賠償額を定めるというもので、「被害者」である無断駐車をした者の「過失」が考慮されるものです。

私有地に無断駐車をした場合には、私有地に無断駐車をしたこと自体が「過失」と評価され、損害賠償の額を減少されると考えられます。

無断駐車で訴えられるケースは少ない?

無断駐車をしたことによって、民事訴訟が提起されることもあるでしょう。
これまで解説した通り、支払いを求められる金額は、月極の駐車場、店舗又はアパートの駐車場での無断駐車であれば、周辺の駐車場の料金の相当額であり、そこまで高額な金額にはなりにくいことが多いでしょう。

民事訴訟では、訴額に応じ、訴訟の提起の際に訴状に添付しなければならない印紙代を始めとして、訴訟費用がかかります。

そのため、少額の損害金の回収のために安くはない訴訟費用を費やしてまで回収することは合理的であるとはいえません。
加えて、訴訟は簡易なものでも判決が確定するまで数カ月を要しますので、実際に訴訟の提起まで至ることが多いとまではいえません。

まとめ

無断駐車は、道路交通法が適用される場合には、刑事上の罰金などの責任が生じます。
また私有地での無断駐車は損害賠償や不当利得等の民事上の責任が生じる可能性があります。

そのため、無用なトラブルを回避するためには、そもそもこのような駐車する権限のない場所に駐車することは避けたほうが無難でしょう。

また仮に無断駐車をしてしまい、所有者の方と連絡を取ることとなった場合には、誠実に対応しましょう。そうすれば、大きなトラブルに発展することを防ぐことができるかもしれません。

訴訟に発展した場合には、弁護士など法律の専門家に相談しましょう。

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