過去の逮捕がニュースなどで報道された場合、その事実がいつまでたってもGoogle検索やインターネット上に残ってしまうことがよくあります。
インターネット上に逮捕歴に関する記事などが残っていると、すでに反省・更生していたり、嫌疑不十分で釈放、不起訴・無罪になったりした場合であっても、逮捕の事実が独り歩きしてしまい、社会的な評判を落としかねません。
インターネット上の逮捕歴に関する記事や書き込みは、法律を踏まえた削除請求などを行うことにより、削除依頼できる場合があります。
この記事では、逮捕歴のネット記事削除を実現するために、法律上取ることのできる対処法・削除依頼方法などについて解説します。
なお、弁護士の初回相談自体は無料のケースも多いので、急いで対処する必要がある方、削除依頼の方法がわからない方は、すぐに相談したほうが良いでしょう。
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逮捕歴がGoogle・ネット上にいつまでも残ってしまう理由
過去の逮捕歴や自分の名前がGoogleやネット記事、インターネット上にいつまでも残ってしまうのは、おおむね以下の理由によります。
不起訴・無罪でもニュース記事の実名報道で多くの人が知ってしまう
刑事事件で逮捕されると、軽微な事件でも都道府県内、比較的重大な事件では全国的に報道されてしまう可能性が高いです。
それは後ほど、不起訴や無罪になっても同様です。
テレビ・新聞・ネットニュースなどによる実名報道は多くの人に届きますので、自分の名前が逮捕の事実が広く社会的に広まってしまいます。
まとめサイト・掲示板・SNSなどで誹謗中傷・拡散されてしまう
実名報道の対象になった刑事事件をGoogleで検索できるということは、インターネット上に多数存在するまとめサイト・ネット記事に掲載されることと同義です
まとめサイトは、互いにリンクを貼るなどしてPV数や広告閲覧数を稼ごうとしますので、結果的に逮捕歴が記載された記事や自分の名前などが、非常に多くのまとめサイトに掲載されてしまいます。
さらに、社会批評家や知り合いなどによって掲示板・SNS上で逮捕の事実が拡散されてしまうと、誹謗中傷がとまらず、もはや拡散を止めることは事実上不可能です。
このように、いったん逮捕の事実が報道されると、「人の口に戸は立てられない」状態になり、拡散力の強いGoogleやインターネットにおいて自分の名前だけではなく誹謗中傷コメントも一気に広まってしまうという実情があります。
ネット上に残った自分の名前・逮捕歴を削除する方法は?
実名報道による逮捕歴に関する情報は、本人の名誉権やプライバシー権を害する情報と捉えられますので、これらの権利に対する侵害を理由に、投稿の削除を請求することが対処法として考えられます。
具体的には、ネット記事を管理するサイトの管理者に直接削除の要請をするか、または裁判所を通じて削除を命令してもらうかの2通りの方法があり得ます。
サイト管理者に自分の名前・逮捕歴の削除依頼
まとめサイト・掲示板・SNSなどには、誹謗中傷や投稿に関するクレームなどを受け付けるフォームが備えられているケースがあります。
その場合は、フォームから実名報道による逮捕歴に関する記事や自分の名前などの削除依頼を求めるメッセージを送信するのが一つの手段です。
また、フォームが設けられていない場合でも、電話番号やメールアドレスが分かるのであれば、直接電話やメールをして、削除を希望する意思を伝えてもよいでしょう。
ただし、サイト管理者に直接削除依頼する場合は、あくまでも交渉になりますので、実際に投稿が削除されるかどうかはサイト管理者の判断次第となります。
裁判所に対して削除の仮処分を申し立てる
サイト管理者が削除に応じてくれない場合には、裁判所に対して投稿削除の仮処分を申し立てる方法も考えられます。
投稿削除の仮処分は、民事保全法に基づく保全処分の一種です(民事保全法23条2項)。
実名報道による逮捕歴に関する投稿の削除を求める場合、投稿によって本人の名誉権やプライバシー権が著しく害されていることを主張して、裁判所に対して削除命令を要請することになります。
ただし、法律の専門家でないと手続きも面倒で煩雑です。Googleに強い、またネット誹謗中傷に強い弁護士に削除依頼したほうが確実でしょう。
ネット記事・逮捕歴の削除はどのような場合に認められる?
ネット記事の削除、逮捕歴の削除請求などを行った場合でも、常に請求が認められて削除が実現するわけではありません。実名報道による投稿の削除を認めるかどうかについては、サイト管理者に対する請求と、裁判所に対する仮処分申立ての場合で、それぞれ以下の基準により判断されます。
サイトのポリシー・ガイドラインに沿って管理者が判断する
サイト管理者に対して直接投稿の削除を請求する場合、当該サイトの投稿削除に関するポリシーやガイドラインに沿って、サイト管理者自身が削除の可否を判断することになります。
逮捕歴の場合は、「誹謗中傷に当たる事実」「本人の名誉権やプライバシー権を侵害する事実」などとして、ポリシー・ガイドライン上の削除事由に該当する可能性があります。
ただし、ネット記事の逮捕が真実である場合には、逮捕歴に関する投稿は公の知る権利に資するものという側面もあるため、サイト管理者が問題なしと判断するケースも多いようです。
実際には、サイト管理者に対する直接請求によって、逮捕歴に関する投稿の削除が認められる可能性は低いと言わざるを得ません。
削除仮処分申立てに対する最高裁の判断基準
裁判所に対して投稿削除の仮処分を申し立てた場合、以前に最高裁が示した基準によって、投稿削除の可否が判断されます。
最高裁平成29年1月31日決定では、インターネット上の逮捕歴に関する検索結果の削除を求めた仮処分申立てについて、
- ①「当該事実を公表されない法的利益」と、「URLなどの情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情」を比較衡量したうえで、
- ②「当該事実を公表されない法的利益」が優越することが明らかな場合
には、検索事業者に対して検索結果の削除を求めることができるという基準を示しました。
なお、上記の比較衡量を行う際には、以下の要素などが考慮されます。
- 当該事実の性質および内容
- URLなどの情報が提供されることによって、本人のプライバシーに属する事実が伝達される範囲や具体的被害の程度
- 本人の社会的地位や影響力
- 記事などの目的や意義
- 記事などが掲載された当時の社会的状況とその後の変化
- 記事などにおいて逮捕の事実を記載する必要性
上記を前提にすると、
- 犯罪内容が軽微である
- 逮捕から時間が経っていて、事件が風化している
- 本人が有名人や、社会的地位の高い人ではない
- 単にゴシップ目的の記事である
- 誹謗中傷のために逮捕の事実が引用されている
などの要件を複数満たす場合には、ネット記事・自分の名前・逮捕歴投稿削除が認められる可能性が高いといえるでしょう。
Googleでの逮捕歴を削除したい場合は弁護士に相談を
Googleやインターネット上に残ったご自身の実名報道による逮捕歴を削除したい場合には、弁護士に相談することをお勧めいたします。
弁護士に相談するメリット
サイト管理者に直接請求する場合、および裁判所に仮処分の申立てをする場合のいずれであっても、判断権者であるサイト管理者や裁判所に対して、投稿を削除すべき法的な根拠があるということを説得的に主張することが大切です。
弁護士に相談をすれば、逮捕の事実自体やその後の関連事情の中から、ご本人に有利な事情を活用して、法的に説得力のある論証を行うことが可能です。
また、サイト管理者や裁判所とのやり取りや手続きの準備を任せることもできるので、ご本人の時間的・精神的な負担は大きく軽減されます。
逮捕歴の削除に関する弁護士費用の相場
逮捕歴の削除を弁護士に依頼する場合の費用は、それぞれの法律事務所が独自に決定しているので、依頼する弁護士によってまちまちです。
多くの法律事務所では、着手金・報酬金という2段階の報酬体系を採用しています。
着手金 | 逮捕歴の削除に関する業務に着手する段階で支払う金額 |
報酬金 | 逮捕歴の削除に成功した場合に支払う金額 |
逮捕歴の削除の場合においては、着手金・報酬金の金額相場はおおむね以下のとおりです。
着手金 | 報酬金 | |
サイト管理者に直接削除を請求する場合 | 5万円~10万円 | 5万円~10万円 |
裁判所に対して仮処分を申し立てる場合 | 15万円~20万円 | 15万円~20万円 |
金額は安くはありません。しかし初回相談費用は無料のケースが多いです。一度相談だけでもしてみるのも一つの良い案でしょう。
まとめ
Googleやインターネット上に残った逮捕歴を削除、ネット記事や自分の名前を削除できるかどうかは、逮捕に関する事情や、その後の状況の変化などによって、ケースバイケースといえます。
逮捕歴の削除が可能かどうかを知りたい方は、一度弁護士にご相談ください。
依頼者が置かれている事情を詳細に検討して、できる限り依頼者に有利な解決が得られるように尽力いたします。