土地の境界線のフェンス・ブロックの法的トラブルを防止する方法

隣人トラブル

隣家との境界線上にあるブロックや目隠しフェンスは、トラブルとなる原因のひとつです。

そもそも、境界線上のブロックや目隠しフェンスは、誰のものなのでしょうか。建て替えが必要な場合、建て替え費用の負担は誰がするのでしょうか。

また、境界線上にブロックや目隠しフェンスをこれから建てる場合に、どのようなことに注意しておく必要があるのでしょうか。

この記事では、隣家との境界線上にあるブロックや目隠しフェンスについて、起こり得る法律問題を解説していきます。

隣の家との境界線にあるブロックやフェンスは誰のもの?

境界線上にあるブロックやフェンスは「設置の費用を負担した者」が所有者となります。

もっとも、費用を負担した者が誰なのか、不明な場合があります。この場合には、「共有」のものと推定されることになります。

法律は、民法第229条で次のように規定しています。

<境界標等の共有の推定>
「境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。」

境界線上のブロックやフェンスが、単独所有か共有かによって、法律関係は変わってきます。

そのため、トラブルになった場合には、まずはそのブロックやフェンスの所有者は誰なのか、もしくは共有なのか、を知る必要があります。

境界線上のブロックや外構フェンスの「単独所有」「共有」で知っておくべきこと

建て替え費用の負担について

境界線上のブロックや外構フェンスはいつか古くなります。

その場合、その建て替えの費用は「所有者が負担」することになります。

そのため、まずは所有者が誰なのかを調べる必要があります。

所有者が誰なのか分からない場合には、先ほど解説したとおり「共有」と推定されます。

共有の場合には、隣人同士が費用を負担する必要があります。

もっとも、この建て替えのときに、共有を避けたいのであれば、どちらか一方が費用を負担して、ブロックやフェンスを設置することも可能です。

単独所有か共有か、どちらがいいの?

境界線上のブロックやフェンスを建て替える場合には、費用を負担して「共有から単独所有に変えることも可能」です。

共有状態だと、なにかと面倒なことが多そうですが、まずそれぞれどのようなメリットとデメリットがあるのか、解説します。

共有のメリット

①ブロックやフェンスの材質・デザイン・高さなどに、意見をいえる。

隣地がブロックやフェンスを単独所有している場合には、材質やデザイン・高さなどは隣地の所有者が全て決めることになるので、「もう少し低くしてほしいな・・・」と思っても、意見をいうことはできません。

しかし、共有であれば、材質やデザイン・高さについて、原則として当事者間の話し合いで決めることになるので、自分の意見を取り入れることができます。

②費用負担が半分で済む。

また、単独所有の場合は、費用を全額負担しなければなりませんが、共有の場合は半額で済みます。

共有のデメリット

①全てにおいて話し合いが必要になる。

ブロックやフェンスの材質やデザイン・高さなど、全てについて話し合わなければなりません。ブロックやフェンスを建てるときだけでなく、その後の補修工事や処分についてもいちいち話し合わなければならないので大変です。

②トラブルになる可能性がある。

隣人同士、仲が良好であれば問題ありませんが、価値観が合わなかったり、意見が合わない場合もあります。

このような場合には、なかなか話し合いで意見がまとまらず、トラブルとなる可能性があります。

トラブルとなれば、最悪の場合、訴訟に発展することもありますので、ますます仲は悪くなり、余分にコストもかかります。

将来的に隣地の持ち主が変わることも十分あり得ますので、誰にでもトラブルに巻き込まれる可能性はあるといえます。

単独所有のメリット

①自分の判断で決めることができる。

ブロックやフェンスの材質やデザイン・高さについて、共有の場合も自分の意見をいれることができますが、単独所有であれば話し合いをすることもなく、自分独自の判断で全てを決めることができます。

②トラブルに巻き込まれにくい。

話し合いをしなくていいので、トラブルに巻き込まれる可能性は低いです。

単独所有のデメリット

①費用がかかる。

単独所有の場合は、全ての費用を負担しなければなりません。
再建するときだけでなく、補修工事が必要になった場合にも、全ての費用を負担しなければならないので、共有の場合に比較して、費用はかかります。

②隣地もブロックやフェンスを建てる可能性がある。

自分の費用で、日当たりや風通しなどを考慮して、ブロックやフェンスを建てたとしても、隣人も隣人の費用で隣地にブロックやフェンスを建てる可能性があります。
この場合には、自分が考慮した日当たりや風通しが全く反映されないこともあり得ます。
それぞれが費用を負担して、それぞれがブロックやフェンスを持つよりも、はじめから話し合って、互いに不利とならないものを設置する方がいい場合もあります。

目隠しフェンス・塀を建てる時の決まりごとはある?

どのようなフェンスやブロックを設置できる?

どのようなフェンスやブロックを設置するか、どれくらいの高さにするかは、民法第225条第2項で、次のように規定しています。

「当事者間に協議が調わないときは、板塀又は竹垣その他これらに類する材料のものであって、かつ、高さ二メートルのものでなければならない。」

条文からお分かりのとおり、どのようなフェンスやブロックを設置するか、どれくらいの高さにするかは、まずは隣人同士で話し合うことになります。

隣人同士の話し合いで決めることができれば、ベストです。

仮に隣人同士の話し合いで、決めることができなかった場合には、高さは2メートルで、木塀か竹垣の材料のものを設置することになります。

費用は折半

隣地との間に、ブロックやフェンスが現時点で設置されていない場合には、設置にかかる費用を半分ずつ負担した上で、ブロックやフェンスを設置することができます。

民法第225条第1項は、次のように規定しています。

<囲障の設置>
「二棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地があるときは、各所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができる。」

少し読みにくい条文かもしれませんが、「共同の費用で」という部分がポイントです。
境界線上にブロックやフェンスを設置しよう、と考えた人だけが費用を負担するのではなく、隣人同士、折半してブロックやフェンスを設置することができます。

自分の敷地にブロックやフェンスを建てる際に注意すべきことは?

①境界線をはみ出さないように注意する|内側と外側

自分の敷地にブロックやフェンスを建てる際には、隣地との境界線をはみ出さないように注意する必要があります。

そのためには、まず、境界線がどこなのかを知る必要があります。

境界線について

境界線とは、「境界標」と「境界標」を結んだ線のことをいいます。

境界標とは、隣り合う土地や道路との境界を示すもので、所有者の土地の範囲を示すために、敷地を囲ったときの角に設置されています。

たとえば、真四角の形の土地を有している場合には、その四つの角にそれぞれ境界標が設置されます。そしてこの四つの境界標を結んだ線が、境界線であり、線で囲った部分の敷地が所有地となります。

境界標は、日ごろ道路を歩いていれば見つけることができるので、この機会に一度、所有地の境界標を見てみてもいいかもしれません。

境界標が見つからない場合は、土地家屋調査士に依頼

いくら探しても、境界標が見つからない場合もあります。

原因は、工事や災害、劣化により、境界標がなくなってしまうことにあります。

この場合には、ご自身で境界線を判断することはできませんので、「土地家屋調査士」に境界線を調べてもらいましょう。

「土地家屋調査士」は、不動産の表示に関する登記の専門家であり、土地や建物の所在・形状・利用状況などを調査してくれます。

境界線のギリギリにブロックやフェンスを建てるとトラブルになる?

ブロックやフェンスの目に見えている部分が、境界線のギリギリにある場合は、おそらく境界線の内側を越えてしまっています。

なぜなら、ブロックやフェンスを建てるには、基礎をつくる必要がありますが、この基礎部分は目に見えていない地中にあり、地中の中で境界線を越えている可能性が高いからです。

そのため、境界線のギリギリに、ブロックやフェンスを建てることは避けておきましょう。

万が一、はみ出してしまった場合には、程度により建て直しを要求されたり、損害賠償責任を追及される可能性もあります。

②勝手に建てず、隣人に声をかけることを忘れない

挨拶して許可をもらう

自分の敷地にブロックやフェンスを建てる場合にも、隣人には挨拶して許可をもらうのが無難です。
なんの声かけもなく、突然ブロックやフェンスを建てられると、勘違いがうまれたり、あまり良い気はしない場合もあります。

トラブルを避けるためにも、隣人にはひと声かけておくことをオススメします。

共有のブロックやフェンスを建てられる可能性

場合によっては、隣人もブロックやフェンスを建てようとしているかもしれません。
お互いが各自の敷地にブロックやフェンスを建てると、二重にブロックやフェンスが設置されることになります。

共有を避けたいのであれば二重でも問題ありませんが、費用を抑えたい場合には、共同の費用でブロックやフェンスを建てることができるので、その確認のためにも、ひと声かけておくと有意義です。

③フェンスを建てる前に、境界線を隣人とともに確認する

注意すべきことの3つ目ですが、必ず境界線を隣人とともに確認することが大切です。

ブロックやフェンスを建てたあとに「境界線をはみ出している!」などと苦情を言われる可能性もあるからです。

そのため、このような苦情を言われないためにも、ブロックやフェンスを建てる前に、隣人と一緒に、境界線を確認しておくことが無難です。

④隣人の迷惑にならない高さにする

ブロックやフェンスを建てることで、隣人にとっては日当たりが悪くなったり、風通しが悪くなる可能性もあります。

法的には違法でなくても、隣人にこのような迷惑をかけないためにも、ブロックやフェンスの高さは2メートル以下が望ましいと考えられます。

隣家がフェンスを建てようとしているが、風通しや圧迫感などで気になる場合、逆にやめてほしいと訴えることはできる?

隣家が自分の土地に、どのようなフェンスを建てるかは、原則として隣家の自由です。

そのため、風通しや圧迫感が気になるからといって、フェンスの設置をやめるよう訴えるこ
とはなかなか難しいです。

もっとも、隣家が建てたフェンスの高さが明らかに高く、日当たりや風通しが全くなくな
ってしまったなど、受忍限度を超える場合には、フェンスを低くするよう求めることがで
きる場合もあります。

話し合っても解決しない場合はどのように対応すれば良い?

隣人とのトラブルは、まずは話し合いで解決することが望ましいです。

裁判になると、費用がかかる上に時間もかかりますので、解決までの間、隣人同士、穏便
に過ごすことが難しくなってしまいます。

どうしても話し合いで解決できない場合には、土地家屋調査士に調査をしてもらい、専門
的な意見を聞きましょう。

専門的な意見を取り入れたうえで、話し合いを進めると、スムーズに解決できる可能性が
あります。

それでも解決できない場合には、弁護士などに相談をしましょう。

工事の差し止め請求や損害賠償請求に発展する可能性もあります。

まとめ

隣家との間にブロックやフェンスを建てる場合には、隣人との話し合いが必要です。

共同でブロックやフェンスを建てる場合には、費用は半分ずつの負担で建てることができ
ますが、単独所有の場合は全ての費用を負担しなければなりません。

境界線の問題は、トラブルになりやすいので、なるべく専門家に調査をしてもらった上で、
ブロックやフェンスを建てることが望ましいでしょう。

法的には違法でなくても、お互いが気分よく過ごすことができるように、ブロックやフェ
ンスを建てる前にはひと声かけることや、ブロックやフェンスの高さは迷惑をかけない高
さにするなど、工夫することが必要ですね。

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