1997年に発生した「神戸連続児童殺傷事件」から、今年で22年になります。自らを「酒鬼薔薇聖斗」と名乗った少年A。
神戸新聞社に送り付けた犯行声明文には、「ボクがわざわざ世間の注目を集めたのは、今までも、そしてこれからも透明な存在であり続けるボクを、せめてあなた達の空想の中でだけでも実在の人間として認めて頂きたいのである」との内容がありました。
少年法改正と厳罰化へ
家庭裁判所調査官として30年以上も少年事件に携わってきた浅川道雄氏は、「神戸事件は日本における新しい少年事件の走り」だと述べています。
性的虐待を長年受けていた娘が、父親・義父を殺害した。非行前歴が積み重なったあげく、少年が殺人を犯した。これらの事件は担当したものの、非行歴がない少年による計画的犯行は経験がないと、浅川氏は言います。
少年犯罪は成人とは違い、少年法の元で裁かれます。
成人に適用される「刑法」と少年に適用される「少年法」とでは、その趣旨が異なっています。「刑法」は犯罪加害者に刑罰を科し罪を償わせるのが目的ですが、「少年法」では少年犯罪の加害者には保護処分を行ない少年の更生が目的です。
一方、青少年の健全な保護育成を図ることを目的とした青少年保護育成条例というものがあり、これは、各地方公共団体が定める条例の総称です。
青少年保護育成条例の規制の内容は、
- 青少年の深夜外出の制限
- 深夜営業施設への立ち入り制限
- 有害図書販売の禁止
- 有害がん具(大人のおもちゃやバタフライナイフ等)の販売禁止
- 青少年が着用した下着の買受の禁止
- 青少年とのみだらな性行為(一般に淫行といいます)の禁止等
があげられます。
少年法は、制定以来、長きにわたって改正されてこなかった少年法。神戸連続児童殺傷事件をきっかけに、2000年に初めて改正されました。
平成12年の改正は、刑事処分可能な年齢を16歳以上から14歳以上に引き下げるという内容でした。
しかし 2000年改正から15年間に、14・15歳少年が刑事処分相当として家庭裁判所から検察官へ送致されたのは17人にすぎない、という調査結果がでました。16歳未満の少年には、少年の更生・教育に比重を置く「少年法」の精神が引き継がれたのです。
元少年A・酒鬼薔薇聖斗に憧れる少年犯罪加害者
神戸連続児童殺傷事件は世の中に衝撃を与えました。少年Aは後の少年犯罪加害者に、大きな影響力を持ったのです。
2000年の西鉄バスジャック事件の加害少年は、酒鬼薔薇聖斗を崇拝。また最近では、2014年の名古屋大学女子学生殺人事件の元女子学生も、自らのtwitterに酒鬼薔薇聖斗への憧れを投稿していました。
1999年には、「西尾市女子高生ストーカー殺人事件」が発生しました。当時17歳の少年が女子高校生に執拗なストーカー行為を繰り返し、殺害に及んだ事件。この加害者は不定期刑の満期10年で服役した後、出所後30歳の時に再犯をしています。
この加害少年は、「神戸事件の犯人・酒鬼薔薇聖斗が中三であそこまでやれると尊敬し、近づきたいと思った」と検察官の取り調べに答えたそう。さらに、少年法により無期懲役や死刑にはならないことを知っていたのです。
まとめ
元少年Aは2015年、「絶歌」という手記を出版。被害者ご遺族の感情を踏みにじるものでした。
「絶歌」の初版は10万部を売り上げたのです。酒鬼薔薇聖斗に憧れた少年たちが後に凶悪犯罪を引き起こしたように、「絶歌」がさらなる少年犯罪の呼び水にならないよう願いたいです。
「少年法」は加害者に甘く、犯罪被害者と遺族に厳しい。加害者のプライバシーは守られるが、被害者のプライバシーは守られない。どこか間違っていると感じる人も多いのも事実です。