意見書とは
少年事件の場合、逮捕された後には警察署の拘留施設や鑑別所に拘束されて、その後は家庭裁判所に装置されます。鑑別所に拘束されている間は心の安定を図りながら身体を拘束されることになり、それぞれの様子を見守るための大事な期間とされています。
監護措置の後には審判を受けますが、審判には少年院送致や保護観察、不処分があります。保護観察というのは少年院などの施設には入らずに社会生活を送りながら指導監督を受ける処分を指します。他にも、審判を受ける前に一定期間社会の中で生活してもらって、その様子を見ながら最終的な判断をする試験観察という処分が取られることもあります。
審判の結果を出す際にもっとも大きく関与するのは非行の内容の重さだと思われがちですが、実はそれぞれの持つ個性や置かれている状況が大きく影響しますので、この辺りが少年事件では気をつけたいポイントです。
個性や環境によってどのような処分を下されるのが将来には良いのかを考えながら判断されることになり、その詳細を調べるのが家庭裁判所調査官です。調査官は、少年から直接、あるいは両親の話を聞いたり、通っていた学校での様子を調べる必要がありますが、一般的な調査では分からないことが多いのも事実です。
そこで、少年の付添人が調査官には見えない部分を調査して欲しいと要求されることになり、それを審判を下す裁判官に伝えます。この調査では、調査官では目の届かない範囲まで調べることが求められており、深く広く調べることで少年の本当の個性や置かれている環境が見えてきます。
審判の前に調査官は裁判官に意見書を提出し、審判の前に少年に会うことのない裁判官は意見書に記載されていることを参考にして方向性を決めていきますので、その内容が非常に重要になります。
ですから、書き方のポイントを押さえて理想的な処分が下されるように内容を考えなければなりません。ただし、必ずこのように書かなければならないという明確な決まりというのは存在しませんので基本的に書く内容は自由ですし、出すか出さないかも自由です。
一般的な書き方としては、きちんと項目に分けて記載していきます。まずは事件を起こした後に少年がどのようなことを考えて反省しているのかを明確にすべきであり、反省の状況についてはできるだけ詳しく記しておく必要があります。
次にその事件をなぜ起こしてしまったのかの原因を追及し、具体的にどのような要因が思い当たるのかを自分なりに分析します。そして、二度と同じような過ちを起こさないようにするためには何が必要なのかを記します。
ただ単に反省しているとはいっても、それがどの程度であるのかは周囲からはとても分かりにくいことですし、口だけの反省なら誰でも言えるという風に捉えられてしまうことも多いので、しっかりと原因の追求をすることも忘れてはいけません。
更正環境は大事
反省している様子や原因を伝え、今後はどのような環境が望ましいのかを明確にした後は、少年の更正環境について触れていきます。
少年の両親やその他の家族などとの関わり方に原因となるものが見られる場合、今後はどのように変えることで少年のフォローをしていくのかを伝えるようにします。
ここで大事になるのは、少年が更生できるように周りのいる人たちが一丸となってフォローをするという姿勢を明確に表すことであり、原因となる部分についても取り除くことができることを示さなければなりません。
起こしてしまった事件の内容によってその後の書き方は違ってきますが、誰か被害者がいるような類のものでなければ更正環境が整っていることをアピールすることで基本的な流れは押さえることができます。前科や前歴、補導歴がなければそれもプラスの材料となりますので、最後に付け加えておくと良いようです。
両親や家族のもとでしっかりと更正できることが期待できるのなら、少年院送致にならないことも多々あります。誰か被害者がいるようなケースでは、その被害者に対して本当に申し訳ないという気持ちを持たなければなりませんので、少年なりに謝罪の気持ちを言葉にすることが大切です。
少年事件での監護措置とは、一般的な拘留と同じような取り扱いですが、身体拘束期間は10日間となっていて期間の延長は認められていません。
監護措置が取られる理由としては、逃げてしまう可能性があることや犯罪の証拠を隠滅する可能性があることが挙げられます。本人が対処する場合にはこれらのリスクがないことを伝えますが、弁護士に依頼する場合には弁護士が検察官に対して拘留請求をしないように働きかけます。
それでも拘留請求をされてしまったら裁判官に拘留を認めさせないようにサポートを行っていくことになり、少年と接見をして事情をよく聞いた上で意見書を作成して、逃げたり証拠隠滅を図る恐れがないことを根気良く伝えます。
この意見書をもとに裁判官と面接をして法律上拘留すべきでないことを説明するのが弁護士の業務内容です。