DVや器物損壊などの被害にあって、どうにかしたいけど、どうしたらいいのかわからない…とお悩みの方はいらっしゃいませんか?
被害にあったけど、被害届をどこで出したらいいのかも、どうやって出したらいいのかもわからなくてそのままにしてしまった…という方がよくいらっしゃいます。
ただでさえ被害にあわれて心や身体に傷を負っている時に、被害届の出し方で悩み、泣き寝入りをするようなことになってしまっては、精神的にも悪影響です。
今回は被害届の出し方について詳しくご紹介していきます。
被害届とは?DV・損害・ストーカーに遭ったときにも出していいの?
被害届とは
被害届の定義
被害届とは、犯罪に巻き込まれて、被害にあったということを警察に伝え、捜査が必要かどうかの判断してもらうための材料となる書類のことを指します。
被害届の概要
当たり前かもしれませんが、警察は家庭内やお店などで起こった全ての事件を把握しているわけではありません。
そのため、何か事件が起こったり、被害を受けた場合には、「このような犯罪に巻き込まれ、被害を受けたから、捜査してほしい」と警察に知らせる必要があります。
その役目を果たすのが「被害届」です。
どんな時に被害届を出すの?
被害届は「犯罪に巻き込まれた」ことを警察に知らせるための書類ですが、ここでいう「犯罪」は多岐にわたります。
店舗を経営されている場合などは、万引きをされてしまった時に被害届を出す機会があるかと思います。また、家庭内暴力であるDVを受けた場合なども、被害届を出す対象となります。
被害届は、被害者となった時に出すことができる書類ですから、万引きやDV、傷害事件などに限ったものではありません。
損害やストーカーなどに困っている場合も、もちろん被害届を出すことができます。
被害届と告訴状の違い
警察に提出する書類の1つに「告訴状」というものがあります。では、「被害届」と「告訴状」とは何が違うのでしょうか?
被害届
被害届は、警察に「犯罪に巻き込まれた・被害にあった」という告知をする書類でした。しかし警察は被害届を受理したからといって、必ずしも捜査が行われるわけではありません。
では、何かしらの被害にあって、なんとかしてほしい…という気持ちから警察に書類を出すにも関わらず、告訴状ではなく被害届を選ぶメリットとは何があるのでしょうか?
被害届のメリット
告訴状よりも被害届のほうが優れている点というのは、ズバリ「受理されやすい」ということです。
受理してしまえば必ず捜査を行わなくてはならない告訴状よりも、被害届は受理されるためのハードルが低いのです。
場合によっては、スムーズに捜査が開始されることもありますので、告訴状を提出して受理してもらえなそうな場合は、被害届を出すことを選択した方が良いケースも多くあります。
被害届のデメリット
やはり1番大きなデメリットは、被害届を受理されたにも関わらず、捜査してもらえないケースがあるということです。
もう1つのデメリットは、被害届を出してすぐに対象者が逮捕されてしまうこともあるという点です。
例としては、旦那様からの恐喝が怖かったため、警察に相談に乗ってもらいたかっただけなのに、すぐに旦那様が逮捕されてしまって困惑してしまった…というようなケースもありますので、よく考えてから提出することが大切です。
告訴状
届けが受理されても捜査してもらえるかどうかわからない被害届に比べて、警察は被害者からの告訴状を受理した場合、捜査をする義務があります。
ここが「被害届」と「告訴状」の1番大きな違いと言えます。「被害届」が被害の告知だけであるのに対して、「告訴状」は、被害の告知に加えて、加害者への処罰を求める意思表示が含まれているのです。
告訴状のメリット
告訴状を受理してもらえれば、必ず調査してもらうことができる。
告訴状のデメリット
受理されるのにハードルが高い。
警察は告訴状を受理すると、義務として捜査を開始しなければならないのと同時に、起訴・不起訴の判断を被害者に伝えるという義務も発生します。
一度告訴状を受理した以上、できる限り起訴できるだけの証拠を集めなければなりません。そのため、証拠に乏しい事件の場合は、告訴状自体受理されないケースも多くあります。
告訴状は後からでも提出できますので、証拠が不十分な場合などは、まずは被害届を先に提出することをおすすめします。
被害届の出し方の流れ、必要な物
次に被害届をどこでどのように出したらよいのか、被害届提出のために必要なものと流れをご説明していきます。
交番、警察署に行く
被害届は、交番・警察署に常備されています。
被害届を出す意思が固まったら、まずは最寄りの交番か警察署へ行きましょう。「被害届を出したいです」と言えば、簡単にもらうことができます。
被害届を書く
交番もしくは警察署で被害届をもらったら、書類の必要事項を埋めていきます。
この時、どのような犯罪に巻き込まれたのかによって多少異なる場合もありますが、
- 被害者(ご本人)の住所・氏名・年齢・職業
- 被害にあった日付と時間帯・被害にあった場所
- 被害の詳細 (どのような犯罪に巻き込まれたのかを具体的に)
- 犯人が分かっている場合は、犯人の住所・氏名・特徴
- 犯人の氏名などはわかっていないが、犯人を目撃した場合は、犯人の特徴(身長や体型など)
といった情報を、わかる範囲で書き込む必要があります。
被害届の提出に持参するもの
被害届は交番や警察署にありますので、持参する必要はありません。
- 身分証明書(保険証・免許証・パスポートなど)
- 印鑑
この2つを持参すれば大丈夫です。
証拠物の提出
遺留物や医師の診断書など、捜査の参考となるような物品や被害にあったことを証明するものがあれば、持参するようにしましょう。
被害届の証明
被害届に不備がない場合は、無事に受理されることになります。被害届出受理番号が通知されるので、番号は大切に保管するようにしましょう。
警察署では被害届を出した証明書のようなものは発行されませんが、この届出受理番号が被害届を出したという証明になります。
被害届はいつまでに提出する必要があるの?
被害届は、捜査機関に犯罪があったことを知らせるためのものです。
そのため、事件解決までの道のりを少しでも短縮するためにも、可能な限り早い段階で被害届を提出することをおすすめします。
とはいえ、性犯罪やご家族からの暴行の場合など、被害届を出すのに勇気が必要な場合も少なからずあります。
このような場合は、公訴時効を気にするようにしましょう。
公訴時効の期間内であれば、被害に合った日から時間が経ってしまっていても被害届を出すことができます。
公訴時効とは
公訴時効とは、検察が事件を起訴することができる時効、つまり制限期間のようなものです。
公訴時効は、事件の種類によって異なるので、以下を参考にしてください。
事案別の公訴時効
- 公訴時効がない犯罪…殺人罪
- 公訴時効が10年の犯罪…強制性交等罪(旧強姦罪)・業務上過失致死罪・過失運転致死罪など
- 公訴時効が7年の犯罪…強制わいせつ・窃盗罪・詐欺、恐喝など
- 公訴時効3年…暴行罪、名誉毀損罪、過失傷害罪、器物損壊罪など
- 公訴時効1年:侮辱罪、軽犯罪法など
各犯罪ごとに定められた公訴時効前であっても、捜査の開始が遅れることによって、捜査が難航してしまう可能性も高くなります。
また上記の公訴時効は、法律の改正によって長さが変わることもあるので注意が必要です。
被害届が受理されない場合とは
公訴時効以前であっても、場合によっては被害届が受理されない場合も存在します。被害届の受理が拒否されてしまう場合にはどのようなケースがあるのでしょうか?
緊急性・重要性が低い事件、もしくは軽微な犯罪の場合
警察はたくさんの事件の捜査を同時に行なっていますので、緊急性や重要性が高い事件の捜査が優先的に行われます。
また、被害金額が数千円程度と軽微な犯罪の場合も、受理されないケースが多いです。
犯人の特徴や居場所が全く不明な場合
近年インターネットを介した特殊詐欺が急増しています。
ホームページに記載されていた会社が存在しない場合や、詐欺を行った人物の氏名や住所が架空のものであった場合は、犯人を特定することができません。
そのため、犯人の特徴や居場所が全く不明な場合は捜査が不可能であると判断され、被害届を受理してもらうことができないケースも多くあります。
民事事件である場合
個人間のトラブルに、警察は介入することができません。
そのため、もしも個人間のトラブルだと受け取られてしまった場合には、民事事件に該当することになります。この場合は民事訴訟を起こすことになりますので、被害届は受理されません。
本人以外でも被害届は出せるの?
本人による提出が原則
被害届は、原則としては被害を受けた本人が提出するものです。
ただし、被害者本人が怪我や病気などの身体的事情によって提出できない場合や、亡くなってしまった場合などは、被害者の親族が提出することもできます。
また、被害者から依頼を受けた弁護士でも、代理人として被害届を作成・提出することができます。
未成年の場合はどうなのか
被害者が未成年の場合は、親権者などの付き添いが求められる場合があります。親といっしょに警察署に行き、被害届を提出するようにしましょう。
成年被後見人の場合はどうなのか
被害者が成年被後見人の場合も、代理人が代わりに被害届を出すことができます。
まとめ
犯罪に巻き込まれ、被害にあってしまったとき、被害届を出したほうが良いのかどうか悩まれることもあると思います。
また、被害届を出すと心に決めても、被害を受けた犯罪がどのような法律に違反するどのような犯罪にあたるのかわからず、公訴時効などについて悩まれることも多いかと思います。
このような場合、もちろん警察へ相談してみるのも1つの方法ですが、弁護士へ先に相談するのもおすすめです。
弁護士に被害状況を話すことで、被害を受けた犯罪がどのような犯罪にあたるのか法律的観点から判断し、被害届と告訴状のどちらを出したほうが良いのかなどの判断も合わせて、相談することが可能です。
被害にあわれて精神的な負担がかかっている時には、一人で抱え込まずに人の力を借りることも大切です。そして、1日でも早い解決を目指していきましょう。