ゴミ出しの時間は、自治体ごとに異なりますが、だいたい朝5時~9時くらいまでの間に出すように決められています。
しかし、夜勤明けなど、仕事上どうしてもその時間にゴミ出しできない場合もあると思います。この時、こっそり指定日以外の日にゴミ出しをしてしまった・・なんてことはありませんか?
また、自分のゴミ捨て場には、すでにゴミ収集車が来てゴミを回収してしまっていた場合に、間に合わなかったからといって、まだゴミ収集車が来ていない近くのゴミ捨て場にこっそりゴミを出してしまった・・なんてこともありませんか?
実はこれらの行為は「立派な法律違反」になります。
「ゴミ出しの時間がちょっと早かったくらい、単なるマナー違反にすぎないでしょ」と思いがちですが、知らないうちに法律違反に該当する行為をしてしまっているかもしれません。
この記事では、このようなゴミ出しにまつわる法律問題を、解説していきたいと思います。
指定日以外の日(前日の夜など)にゴミを出すのは違法?
まず、ゴミ収集日を守らない人がいる場合にについて考えてみましょう。
ゴミ収集日を守らない!|ゴミ置き場・ゴミ出しと法律の関係
ゴミ出しのルールについて規定しているのは、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」という法律で、一般的には「廃棄物処理法」と呼ばれています(この記事でも、この法律のことを「廃棄物処理法」と呼びます。)
廃棄物処理法の第16条では、次のように規定されています。
【廃棄物処理法第16条】
「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。」
つまり「自分の都合」でゴミを捨ててはいけないということが法律で定められています。
そのため、いくら仕事上の都合でやむを得ないとしても、ゴミ収集日の前日の夜や、自分の都合の良い日、指定日以外の日にゴミを出す行為は、廃棄物処理法に違反することになります。
指定された日に、指定されたゴミを出すようにしましょう。
廃棄物処理法に違反したらどうなるの?
廃棄物処理法は第25条において、違反者に対して罰則規定を設けています。
罰則は、違反内容により異なりますが、下記のような罪が科される場合があり、重い罰則規定であるといえます。
・5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金、またはこれの併科
単なるマナー違反と思われる行為も、重い罰則が科される可能性がありますので、ゴミ出し行為には注意が必要です。
住民以外がゴミ捨て場を利用した場合、不法投棄で逮捕される?
指定以外のゴミ捨て場を利用するのは廃棄物処理法違反?
指定以外のゴミ捨て場にゴミを出す行為は、「不法投棄」であり、先ほど解説した廃棄物処理法の第16条に違反する行為となります。
違反した場合には、罰則規定が設けられているのも、先ほど解説した通りです。
そのため、ゴミ収集車のゴミの回収に間に合わなかったとしても、近くのゴミ捨て場に住民以外がゴミを出す行為は、「不法投棄」にあたり法律に違反するので、してはいけません。
また、よく話題になっていますが、「コンビニやスーパーのゴミ箱に家庭用のゴミを捨てるという行為」も「不法投棄」にあたります。
もちろん、公園や駅のゴミ箱も同じです。
家庭用のゴミは、自分が指定されたゴミ捨て場に捨てなければなりません。
当たり前のように思えますが、意外と守られていないケースが多いようです。
実際に逮捕された事件
実際に「不法投棄」として逮捕された事件を2つ紹介します。
〈駐車場に家庭用のゴミを不法投棄〉
この事件は、40歳代の女性が、ショッピングセンターの駐車場において、カップ麺の容器など、計約19キロのゴミを無断で捨てたとして、不法投棄により逮捕された事案です。
女性は、「家で捨てられなかったゴミを捨てていた。40回くらいは捨てた。」と供述していたそうです。
市街地に家庭用のゴミを不法投棄したとして逮捕された、珍しい事件であり、話題になりました。家庭用のゴミは、自分の指定されたゴミ捨て場に捨てましょう。
〈マンションのゴミ捨て場に不法投棄〉
この事件は、男性とその妻、男性の兄ら計4人が、家庭用のゴミを無関係のマンションのゴミ捨て場に捨てたとして、不法投棄により逮捕された事案です。
男性らは、引っ越しの際に出たゴミの処理に困っていたところ、男性の兄が「以前住んでいたマンションは分別をしなくても捨てられる」と提案したことから、衣類やDVDデッキ、雑誌などを、自分とは全く関係のないマンションのゴミ捨て場に捨てたというものです。
ゴミは、自分の指定されたゴミ捨て場に捨てなければなりませんし、粗大ゴミなど、自分の指定されたゴミ捨て場には捨てられないものは、業者に頼んで処分してもらわなければなりません。
ゴミを分別しないことは法律に違反する?ルールを守らせるには
ゴミの分別のルール違反への対応は自治体によって異なる?
ゴミの分別のルールは自治体によって異なります。なぜなら、ゴミの量やゴミ焼却場の処理能力は、自治体によって様々だからです。
例えば、兵庫県神戸市では、①プラスチック、②カン・ビン・ペットボトル、③燃えるゴミ、についてはそれぞれ専用の色のついたゴミ袋がスーパーやコンビニで販売されており、専用のゴミ袋に分別した上でゴミを出さなければならないというルールがあります。
一方で、そのような分別専用のゴミ袋の指定まではルールとなっていない地域もあります。
まずは、自分の住んでいる自治体のホームページを見て、分別のルールを確認する必要があります。
ゴミを分別しないことは法律に違反する?
先ほど解説した通り、ゴミの分別のルールは自治体によって様々です。
そのため、分別をしないことについて、法律は規定を設けていません。
しかし、自治体ごとに「条例」というものがあります。
市によっては、この条例に基づき、市が「ゴミ袋を開封」して、分別されているかどうか内容を確認して適正にゴミ出しをするよう、指導を行う場合もあります。
ゴミを分別しなかった場合に、罰則はある?
ゴミの分別のルールは自治体ごとに異なるため、ルールに違反した場合に罰則があるかどうかも、自治体ごとに異なります。
例えば、神奈川県横浜市では「分けて出すのがハマルール」というスローガンを掲げて、「分別ルールを守らない者に対する、罰則(過料)制度」を設けています。
分別をしなかった場合に、直ちに罰則が科されるのではなく、勧告(その行為をやめるように説得して強く勧めること)、命令をしてもなお、ゴミを分別しないで出した場合に、罰則(過料2,000円)が科されるというものです。
このように、罰則を設けているか設けていないか、罰則を設けているとして、金額はいくらか、などは自治体によって様々です。
これを機に、自分の住んでいる自治体のゴミの分別のルールについて、調べてみましょう。
ゴミ出しルールを守らない人がいるので、犯人を特定するためにゴミ袋を開封するのは法律に違反しない?プライバシーの侵害にはならないの?
燃えるゴミの中身を見られた!開封されない権利は憲法で保障されている?
ゴミは、あくまで本人が自分の意思で捨てたもので、自ら所有権を放棄しているのだから、燃えるゴミにしろ燃えないゴミにしろ、他者が開封しても問題ないようにも思えます。
しかし、ゴミの中を見れば、レシートからは買ったものや食べたものが見られてしまったり、診断書や処方箋などのゴミがあれば、その人の身体状況に関する情報が分かってしまうこともあります。
このような情報は、プライバシーに関する情報であり、いくら自分の意思で捨てたからといって、本人が他人に知られたくないと思うことは当然です。
また、ゴミ袋を開封されないという期待を抱くのも、通常のことだと思います。
そのため、ゴミを開封されない権利は、憲法13条から導き出される「プライバシー権」として、保障されていることになります。
このことから、他人のゴミ袋を開封して、中身を見ることは、プライバシー権の侵害にあたることが分かります。
みだりに他人のプライバシー権を侵害すれば、場合によっては損害賠償責任を負うこともありえます。
管理業務としてゴミ袋を開封することはいいの?
他人のゴミ袋を開封することは、プライバシー権の侵害になるため、原則として認められません。
しかし、マンションなどを管理している方の立場からすれば、ゴミに関するルールをいつまでたっても守らない入居者がいれば、その者を特定して個別的に注意をしたい場合もあると思います。
このような場合は、管理者による管理業務として、他人のゴミ袋を開封しても違法性がないとして許容される場合があります。
ただし、あくまで、「ゴミに関するルールを守らないことにより、ゴミ捨て場や住環境に悪影響を与えている」という状況を改善するために行う行為ですので、ある程度プライバシー権を侵害してしまう、ということを十分に考慮した上で、行われる必要があります。
可能であれば、使用規則などに、「ゴミに関するルールを守らない場合には、管理業務としてゴミ袋の開封を行う」などの記載をしておくのが望ましいと思います。
自治体がゴミ袋を開封することはいいの?
ゴミを分別するというルールを守らない人が後を絶たないため、ゴミ袋の開封調査を実施する自治体も増えてきています。
しかし、自治体には、ゴミ袋を開封して個人情報を調べる権限はありません。
そのため、自治体によるゴミ袋の開封調査についても、憲法13条のプライバシー権侵害との関係で、問題となってきます。
この自治体によるゴミ袋の開封調査については、ニュースでも取り上げられるように、賛否両論であり、違法であるとは断言できないし、適法であると断言することもできません。
ただ、自治体としては「市民の意識を高め、抑止効果を狙うのが目的で、開封調査はあくまで最終手段」として位置付けているようですので、直ちにプライバシー権の侵害とはいえないと思います。
また、自治体によっては、開封調査にあたっての手続きや開封後の対応などをマニュアル化したり、ゴミの中身を見る職員を限定して、違反ゴミの写真撮影の際には、プライバシーに関するゴミは映らないようにするなど、プライバシー権を侵害しないように工夫をしている自治体もあります。
そのため、現時点ではこの自治体によるゴミ袋の開封調査が、憲法違反であるとの判断はされていない状況です。
一人一人がゴミの分別を意識して生活をすれば、このような問題は生じませんし、自治体によるゴミ袋の開封調査の手間も省ける上に、誰のプライバシー権も侵害されません。
これを機に、ゴミの分別についても意識してみてはいかがでしょうか。
ゴミに関するルールを守らない入居者は退去させることは可能?
マンションの賃貸借契約のような長期にわたる継続的契約は、当事者間の信頼関係が基礎に成り立っています。
そのため、賃貸借契約を解除して入居者を退去させるには、「信頼関係が破壊された」といえるような特段の事情が必要となります。
「信頼関係が破壊された」といえる特段の事情とは、たとえば、長期にわたって家賃を滞納している場合や、無断で知らない人に転貸している場合などが挙げられます。
そのため、ゴミに関するルールを守らないことは、大変迷惑な行為ではありますが、「信頼関係が破壊された」とまでは評価できないケースが多いと思います。
もちろん、ルール違反の程度によっては「信頼関係が破壊された」として、賃貸借契約を解除できる可能性もありますので、話し合いが難しい場合には、弁護士などの専門家に相談してみてもいいかもしれません。
まとめ
これまで解説してきたように、ゴミ出しに関するルールには、様々な法律問題があります。
ちょっとした行動が、法律に違反してしまうこともあるし、他人に迷惑をかけてしまうこともあります。
これを機に、自分の住んでいる自治体のゴミの出し方に関するルールを調べてみて、自分自身のゴミの出し方について、見直してみてはいかかでしょうか。