不起訴とは、警察や検察官など捜査機関による捜査の終結段階において、被疑者に対して検察官が公訴を提起しない、つまり有罪か無罪かを裁判所で公平に判断する刑事裁判を行わないと判断する処分のことです。
この不起訴処分を受けたという事実を告知する「不起訴処分告知書」という書類の存在をご存知ですか?
「不起訴処分告知書」は、不起訴処分となったからといって自動的に交付されるわけではなく、自ら申請しなくてはなりません。
今回は「不起訴処分告知書」の申請方法や取得時期など、「不起訴処分告知書」について詳しく解説していきます。
不起訴に関して詳しく知りたい方は、下記記事をご参考ください。
不起訴処分告知書とは
まずはじめに、「不起訴処分告知書」とは、警察や警察官などの捜査機関により捜査の対象となった刑事事件について、不起訴処分となったことが記載されている書面のことを指します。
刑事訴訟法第259条には、検察官は被疑者からの請求があったときには、不起訴処分となった旨を告げなくてはならないと規定されています。
・刑事訴訟法259条
検察官は、事件につき公訴を提起しない処分をした場合において、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨をこれに告げなければならない。
そこで、不起訴になったことと、被疑事件が終了したことを証明することによって、被疑者の地位を守る役割を持つ書類として「不起訴処分告知書」というものがあるのです。
「不起訴処分告知書」には、A4サイズの1枚の紙に次のような情報が記されています。
- 被疑者の氏名
- 担当検察官の氏名
- 被疑事実
- 不起訴処分となったということ
- 不起訴処分の日付
「不起訴処分告知書」の取得方法
「不起訴処分告知書」は、不起訴になった時点で自動的に自宅に郵送され、不起訴処分になったと告知してくれるわけではありません。
不起訴処分告知書を取得したいという場合には、被疑者側から請求することが必要です。
具体的な取得方法をご紹介します。
弁護士に相談している場合
弁護士に相談している場合には、弁護士に不起訴処分告知書を取得したいということを伝えることで、弁護士が検察官へ働きかけて取得してくれるという流れが一般的です。
ちなみに国選弁護人については、被疑者が釈放されたときに選任の効力が失われます。(刑事訴訟法38人条の2)
そのため、国選弁護人の場合には不起訴処分告知書の交付申請を断られるケースもあります。
・刑事訴訟法第38条の2
裁判官による弁護人の選任は、被疑者がその選任に係る事件について釈放されたときは、その効力を失う。ただし、その釈放が勾留の執行停止によるときは、この限りでない。
弁護士がいない場合
弁護士がいない場合には、自分で直接請求しなくてはなりません。
自分で請求するような場合には、郵送で請求するか、もしくは検察庁に直接出向き、検察官や検察事務官から交付を受けることとなります。
不起訴処分告知書の受領自体は、被疑者本人ではなく、家族でも可能な場合があります。
家族が受け取りに行く場合には、事前に検察官に連絡して話を通しておくようにしましょう。
なお家族が受領する場合には、戸籍謄本の提示を求められます。
口頭で請求する方法
担当検察官によっては、電話で口頭でお願いして、そのまま交付してもらうことが可能な場合もあります。
一度担当検察官に電話をして、電話での請求が可能か確認してみましょう。
郵送で請求する方法
必要事項を記入した申請書と、規定金額の切手を貼った返信用封筒を同封して、当該事件の担当検察官に送ります。
検察官が普通郵便で送付してくれるという場合には、返信用封筒に84円分の封筒を貼れば大丈夫です。
しかし簡易書留での発送となる場合には、440円分の切手が必要です。
検察官によっては簡易書留でしか発送しないというケースもありますので、前もって担当検察官に普通郵便と簡易書留のどちらでの発送となるか確認しておくことをオススメします。
検察庁で直接請求する方法
- 身分証明証(運転免許証など)
- シャチハタ以外の印鑑(認め印は可)
を持参して、検察庁へ出向き、検察官や検察事務官から直接交付を受けてください。
「不起訴処分告知書交付申請書」の書式
不起訴処分告知書を取得するための申請書は、特に書き方に定めはありません。
そのため、
- 被疑者の氏名
- 担当検察官もしくは検察事務官の氏名
- 不起訴処分告知書の申請書を書いた日付
- 不起訴処分告知書を交付してほしいという旨
を記載すれば十分です。
ここに書式の一例を示しておきます。
不起訴処分告知書交付申請書 ○○地方検察庁 上記の者に対する○○○○被疑事件につき、刑事訴訟法第259条に基づき、不起訴処分告知書の交付を申請いたします。 以上 |
前述の通り、不起訴処分告知書交付の申請書は特に書式が決まっているわけではないので、上記の書き方で十分です。
ただ各検察庁によって、書式が若干異なる場合もありますので、念のため担当検察官や事務検察官に電話で事前に確認をしたほうがよいでしょう。
「不起訴処分告知書」の取得費用
「不起訴処分告知書」は、基本的に無料で取得することができます。
不起訴処分告知書の取得を弁護士に依頼した場合に費用がかかるかどうかは法律事務所によって異なります。
しかし不起訴処分告知書の取得は、弁護活動ではなく事務手続の1つです。
そのため、仮に弁護士費用が発生するとしても、実費程度の少額のことがほとんどです。
弁護士に頼む場合も、ご自身で取得される場合も、検察庁での費用はかかりません。
「不起訴処分告知書」の取得時期
「不起訴処分告知書」を取得できる期間は決められているのでしょうか?
実際に「不起訴処分告知書」の取得が可能となるのは、不起訴処分が正式に決定した後からになります。
具体的な流れとしては、まず当該事件の担当検察官が不起訴とすべき旨の裁定書を作成します。
そして、その裁定書を上席検事の決裁に上げ、そこで不起訴の決裁を受けた時点で初めて不起訴処分が正式に決定することとなります。
たとえ担当検察官が不起訴とするという意見を持ち、それが伝えられてていたとしても、上席検事によって正式に不起訴処分の決裁が下りる前の段階では、不起訴処分告知書の取得を申請しても手にするすることはできません。
不起訴処分告知書の使用方法
では、不起訴処分告知書はどのような時に必要となるのでしょうか?
不起訴処分告知書の使用方法は以下のとおりです。
公的手続き
年金や保険などを含め、公的手続で不起訴処分告知書を使用することは一切ありません。
その他の手続き
公的手続以外の手続でも、不起訴処分告知書を使用することはありません。
ただ、刑事事件の被疑者となった事実が既に勤務先に知られてしまっている場合には、不起訴処分告知書が効力を持つことも多々あります。
例えば、すでに懲戒処分の手続きが進行してしまっているような場合には、自ら人事部に不起訴処分告知書を提出して不起訴になったという事実を証明することによって、処分が軽くなるケースもあります。
まとめ
今回は、「不起訴処分告知書」の申請方法や取得時期、また使用方法などについてご紹介してきました。
公的手続きにおいても、その他の手続きにおいても、基本的には不起訴処分告知書を使用することはありません。
しかし手元に不起訴処分告知書を持っていることで、もしも勤務先などから不起訴処分となった事実の証明を求められた時には、すぐに提出することができます。
また、不起訴処分告知書を保管し常に被疑事件のことを思い出せる環境に自らを置くことで、二度と罪を犯さないという決意を鈍らせないようにするというメリットもあります。
不起訴処分告知書が必要な場合には、弁護士に依頼することでスムーズに入手することが可能です。
申請書の書き方が心配な場合や、検察庁に一人で出向くことに不安があるような場合には、弁護士に相談してみることをおすすめします。