マンションやアパート等にお住いの場合、
「上の階の子どもの足音がうるさい」
「足音のドンドンする音が気になって眠れない」
など、足音による騒音に悩まされている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、足音による騒音に対して、どのように対応すべきなのか、どのような対策をとればいいのかなど、足音による騒音の法律問題について、分かりやすく解説していきます。
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足音による騒音について規制する法律・条例・規約はあるの?
騒音と法律
騒音について規制する法律として、「騒音規制法」という法律があります。
しかし、この法律は、機械プレスや送風機など、著しい騒音を発生する工場・事業場のみが規制対象となっており、足音による騒音は規制対象には含まれていません。
工場・事業場などの施設から発生する騒音は、著しく大きな騒音であり、町中に響き渡るため、生活環境の保全や国民の健康の保護のために、法律で規制されています。
一方、足音による騒音は、これに比べると単なる生活音にすぎず、小さな騒音ですので、「原則として当事者間での解決」に委ねられています。
足音による騒音について規制する条例はあるの?
足音による騒音について規制する法律はありませんが、自治体によっては「条例で足音による騒音についても、規制の対象」となる場合があります。
たとえば、奈良県平群町の「安全で安心な町づくりに関する条例」を例に挙げます。
この条例は、第2条において「騒音」について次のように定義しています。
<第2条第1項>
「騒音とは、すべての楽器・ラジオ等の音響機器 又は 人声その他の音とし、町民に迷惑を及ぼすことをいう。」
「足音」とは明示していませんが、わざとドンドンしたりして、迷惑になるほどの足音を発しているのであれば、「その他の音」に該当するとして、足音による騒音も規制の対象になる場合があると考えられます。
もっとも、足音がわざとではなく、単に日常生活において発生するレベルのものであれば、同条例の第5条第1号ただし書きにより、規制の対象から外されます。
<(迷惑行為)第5条第1号ただし書き>
「何人も正当な理由なく、いずれの場所で各号に掲げる行為をしてはならない。」
「第1号 環境基準を超える騒音を発すること。ただし、日常生活において発生する騒音を除く。」
自治体によって、規制される騒音の対象や、騒音レベルの基準なども異なってきますので、気になる場合はこれを機に、一度自分の住んでいる自治体の条例を確認してみましょう。
足音による騒音について規制するマンションの管理規約
マンションには「管理規約」というものが定められています。
この管理規約では、マンションの住民が快適に生活することができるように、様々なルールが定められています。
管理規約は、国土交通省がひな形を掲載しており、このひな形に基づいてマンションの管理者が作成するので、内容はマンションの管理者の裁量に委ねられています。
そのため、マンションによって規約の内容は様々です。
足音などの生活音による騒音については、マンションにおいて問題となりやすいものですので、規約においてルールが定められている場合が多いです。
これを機に、一度住んでいるマンションの管理規約を確認してみましょう。
上の階の人に対して、損害賠償責任を追及できる?
マンションやアパート等において、上の階の人の足音による騒音が受忍限度を超える場合には、民事上の損害賠償責任を追及できる場合があります。
ここでは、実際に損害賠償責任が認められた裁判例と、認められなかった裁判例を紹介します。
損害賠償責任が認められた裁判例
実際に、マンションの上の階の人に損害賠償責任が認められた裁判例を2つ紹介します。
東京地方裁判所 平成19年10月3日判決
<事案>
東京都板橋区にあるマンションの1階に住む男性が、同じマンションの2階に住む男児(当時3歳~4歳)の騒ぐ音や、走り回ったり飛び跳ねたりする音がうるさく、精神的苦痛を受けたとして、男児の親に対して240万円の損害賠償請求をしました。
<判決>
裁判所は、本件騒音は深夜に及ぶこともあったため、親として男児が騒がないようにしつけをするのは当然であるとして、「受忍できる限度を超えている」と判断しました。
そして、男児の親に対して「36万円の損害賠償の支払」を命じました。
東京地方裁判所 平成24年3月15日判決
<事案>
上の階に住む子どもの走り回る音がうるさく、それが原因で頭痛が生じ、通院を始めたとして、下の階の住人が上の階の子どもの親に対して、損害賠償請求をしました。
<判決>
裁判所は、本件騒音は深夜に及ぶものであり、受忍限度を超えるとして、上の階の親に対して「126万円の損害賠償の支払い」を命じました。
その上で、騒音を午前7時から午後9時までは53デシレベル以下に、深夜早朝については40デシレベル以下にするよう、命じました。
損害賠償責任が認められなかった裁判例
東京簡易裁判所 平成14年12月6日判決
<事案>
マンションの上の階に住む子どもの走り回る音がうるさいことから、引っ越しせざるを得なくなったとして、下の階の住人が上の階の子どもの親に対して、30万円の損害賠償請求をしました。
<判決>
請求棄却。
裁判所は、本件騒音は深夜に及ぶものではなく、昼間の短時間にすぎないとして、「受忍限度内である」と判断しました。
そのため、損害賠償請求は認められませんでした。
裁判例から分かること
ご紹介した3つの裁判例から分かることは、足音による騒音について損害賠償責任が認められるか否かは、その騒音が「受忍限度を超えているか否か」が判断基準になっているということです。
そして、受忍限度を超えているか否かは、騒音が深夜や早朝に及んでいるか、長時間か短時間か、が判断の要素になっていると考えられます。
したがって、深夜や早朝にわたって長時間、上の階の人の足音による騒音に悩まされている場合には、損害賠償責任を追及できる可能性が高いといえるでしょう。
仕返しとして「天井ドン」などをしてはいけない?
マンションやアパート等において、上の階の人の足音がうるさい場合に、その仕返しとして天井を突いて「ドンドン」と仕返すのは、やめておく方が無難です。
天井をドンドンと突く場合に、棒などを使用して天井を傷つけてしまうおそれがありますし、天井を傷つけたことによる修理代金は自分が負担しなければなりません。
また、お互いにドンドンし合うと「さらなるトラブル」に発展する可能性があります。
実際に、騒音トラブルから事件に発展したケースもありますので、いくら足音がうるさくても、天井をドンドンして仕返しをすることはやめておきましょう。
お互いにドンドンしあっても、何ら解決にはつながりませんので、次に解説する方法で、解決をするように、試みましょう。
足音による騒音で悩んだ場合、どうすればいいの?誰に相談したらいいの?
①当事者間で、口頭で伝える
上の階に住む子どもの足音がうるさい場合、その子どもの親に、足音の騒音を改善してほしい旨を話してみましょう。
相手が話を受け入れてくれて、改善をしてくれるのであれば、手間や費用もかけずに解決できるので、ベストです。
直接話をする場合には、いきなり厳しい言い方をするのではなく、穏便に解決できるように、落ち着いて話をするよう心がけましょう。
②手紙で伝える|具体的な例文
上の階の人に、手紙で伝える方法も有効的だと思います。
直接話し合うと、感情的になってしまう可能性もありますので、落ち着いて、まずは「お願い」という形で、足音による騒音を改善してほしい旨を伝えましょう。
手紙を書く際には、以下の手紙の例文を参考にしてみてください。
<例文1>
○○○○様
はじめまして。
私は○○○号室の○○○○と申します。
突然のお手紙で申し訳ございません。このたび、○○○○様にお願いしたい事があり、お手紙を書かせていただきました。
最近、○○○○様のお宅から聞こえるお子様の足音が気になっております。
深夜に及んで聞こえることもあり、眠れない日々が続いております。○○○○様のご事情も存じておりますが、できる限りお子様の足音にご配慮いただければ幸いです。
突然で、一方的なお願いで大変恐縮なのですが、よろしくお願い申し上げます。
令和〇年〇〇月〇〇日
○○○○(名前)
一度、「お願い」という形で手紙を出したにもかかわらず、全く改善されないようであれば、もう一度手紙を出してみてもいいかもしれません。
再度の手紙を出す場合には、以下の手紙の例文を参考にしてみてください。
<例文2>
○○○○様
○○○号室の○○○○です。
いかがお過ごしでしょうか。以前、お願いしました足音の件ですが、未だ改善されないようですので、再度お手紙を書かせていただきました。
再度のお願いはとても心苦しいのですが、今一度、足音にご配慮いただきますよう、お願い申し上げます。
令和〇年〇〇月〇〇日
○○○○(名前)
③管理会社や大家さんに相談をする
当事者間での話し合いでは解決できない場合や、当事者間で話し合いをすることに抵抗がある場合には、マンションの管理会社や大家さんに相談をしましょう。
管理会社や大家さんに相談する際には、どのような音が気になるのか、どれくらいの時間帯なのか、頻度はどのくらいなのか、など、具体的に被害の内容を伝えることが重要です。
音の聞こえ方は、人によって異なりますので、自分にとっては迷惑でも、通常の人にとっては単なる生活音にしか感じない場合もあります。
管理会社や大家さんとしても、軽微な苦情に対して、全て対応することは困難かもしれませんので、管理会社や大家さんに注意をしてもらいたいときには、具体的に内容を伝えるよう、心がけましょう。
4.弁護士など法律の専門家に相談をする
管理会社や大家さんに相談をしても動いてくれない場合には、弁護士など法律の専門家に相談をしてみましょう。
ただし、弁護士などに相談をする場合には、相談料などの費用がかかってしまいますので、あくまで最終手段としての位置付けです。
弁護士など法律の専門家に相談をすれば、以後、裁判に発展した場合にも、代理人として手続きをしてもらえるので、安心です。
また、先ほどご紹介した裁判例のように、損害賠償責任を追及したい場合にも、法律の専門家に相談をすれば、適切なアドバイスをもらえると思います。
足音による騒音の対策はどうすればいいの?
①防音対策グッズを購入する
手軽に対策をしたい場合には、市販の防音対策グッズを購入してみましょう。
防音カーテンや、壁に貼れる遮音シートなど、ネットショッピングでも手軽に購入することができるので、これを天井に貼ってみることで、対策になる可能性があります。
②防音対策の備わっている部屋に住む
騒音トラブルに巻き込まれたくない場合には、家を購入したり賃借する際に、防音対策の備わっている部屋を選ぶようにしましょう。
具体的には、「鉄骨鉄筋コンクリート造」の部屋を選ぶことをオススメします。
鉄骨鉄筋コンクリート造とは、鉄筋を組んだ枠の中にコンクリートを流し込んで固めたものを、更にコンクリートで補強した構造のことをいいます。
鉄骨鉄筋コンクリート造の建物であれば、防音だけでなく、耐震性・耐火性・耐久性をも兼ね備えているため、安心して生活を送ることができます。
もっとも、良い構造である分、費用は高くなります。
また、最上階の部屋に住むという方法も考えられます。
最上階の部屋であれば、上の階の人の足音に悩まされることはありません。
部屋を購入・賃借する前に、検討してみてもいいかもしれません。
まとめ
上の階の人の足音による騒音トラブルは、よくあることです。
直接注意をする場合には、いきなり厳しい態度でいくよりも、落ち着いて話し合いをするほうが、穏便に解決できます。
足音による騒音がひどい場合には、管理会社や大家さんだけでなく、弁護士など法律の専門家に相談をするようにしましょう。
騒音トラブルに悩まされず、安心して生活ができるように、マンションやアパートを購入・賃借する場合には、防音対策の備わった部屋を選ぶように心がけましょう。
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