「被害届」とは、捜査機関に対して「犯罪に巻き込まれてしまい、実際に被害にあった」ということを伝えることにより、捜査が必要かどうかを判断してもらうための材料となる書類のことです。
被害にあった場合、被害者が申告しなければ警察は犯罪を知るすべはありません。
そのため、捜査を開始してもらう最初のスタート地点となる被害届はとても重要なものとなります。
今回は、「被害届」の具体的な書き方について、受理される書き方と不受理となる書き方の違いなど詳しく解説していきたいと思います。
被害届の書式とダウンロード
被害届は、交番や警察署に常備されています。
最寄りの交番か警察署へ行き、「被害届を出したい」と伝えれば簡単にもらうことができますが、以下のURLからダウンロードすることも可能です。
電子政府の総合窓口(e-Gov)「被害届の書式(PDF)」
被害届の書き方
被害届に書かなくてはならない情報は、被害にあった内容によってそれぞれ異なります。
そのなかでも、どんな被害であったとしても必ず書かなくてはならない情報を挙げておきます。
- 被害者の氏名
- 被害者の住所・職業・年齢
- 被害にあった日付と時間帯
- 被害にあった場所
- 被害の内容
以下犯人がわかっている場合には…
- 犯人の氏名または通称(わかる場合)
- 犯人の住所
- 犯人の服装などの外見・人相・特徴など
- 遺留品、その他参考となるような事項
これらの情報を、わかる範囲で出来る限り書き込む必要があります。
また、被害の内容によってはこれだけでは足りない場合もあります。
例えば金銭的価値のあるものに対して被害を受けた場合などは、
- 被害金額
- 被害にあったものの品名・数量・特徴・所有者
などを書かなくてはなりません。
事前に警察に「○○のような被害に遭い、被害届を出したい」という事情を説明し、具体的にどのような情報が必要なのか聞いておくほうが安心でしょう。
警察が被害届を受理しない場合
警察は被害届が提出された場合には、基本的には必ず受理しなくてはなりません。
しかし、どんなにお願いしても警察が被害届を受理しない場合もあります。
被害届を受理してもらえない場合の理由を大きく3つに分けると、以下の通りです。
- 民事事件の扱いになる判断された場合
- 犯人を特定することが非常に困難であると判断された場合
- 被害が非常に軽いものであったり、被害から長期間経過している場合
この3つの理由について詳しく解説していきます。
民事事件の扱いになる判断された場合
警察では基本的に刑事事件だけが扱われます。
そのため、親族間での揉め事や契約上のトラブルなど民事事件であると判断されたものに関しては、警察は民事事件には介入しないという原則(『民事不介入の原則』)から、被害届を受理してもらうことができません。
そのため、例えば詐欺に合ってしまった場合には、その被害が契約上のトラブルによる民事事件の範疇ではなく、刑事事件であると判断してもらうような被害届を書かなくてはなりません。
具体的な被害届の書き方については、後ほどご紹介していきます。
犯人を特定することが非常に困難であると判断された場合
犯人の氏名・住所だけではなく、外見や特徴・連絡先など全く犯人の手がかりがない場合には、犯人の特定が非常に困難となります。
このようなケースは、海外にサーバーを持つサイトなどを経由した詐欺被害などでも見られます。
インターネットを通じてのやりとりでは、相手の氏名や住所はもちろん、性別やだいたいの年齢でさえ分からないことがほとんどです。
このような場合には、被害届を受理して捜査を開始できる可能性が低いため、被害届自体受理してもらうことができない可能性が高いです。
しかし、同じインターネットサイトを経由して詐欺にあった被害者が多数存在したり、極端に被害額が大きいような場合には、悪質な事件であると判断され、捜査が開始されることもあります。
被害が非常に軽いものであったり、被害から長期間経過している場合
例えば「何年も前に200円だまし取られた」という旨の被害届を提出しようとしても、被害額が少額であり、何年も経過していることから証拠が見つかりにくいという理由から、被害届を受理してもらえないこともあります。
また、刑事事件にはたとえ犯人と罪が明白なものであっても、検察が起訴できる制限時間である「公訴時効」がすぎてしまうと裁判を起こすことができません。
「公訴時効」とは検察が起訴できる制限時間のことで、事件の内容によって時効はそれぞれ異なります。
例えば、侮辱罪や軽犯罪法などの公訴時効は1年、暴行罪や名誉毀損罪などの公訴時効は3年、窃盗罪や詐欺罪などの公訴時効は7年というように、罪の種類や重さによって異なる期間が定められています。
つまり、仮に詐欺の被害があったとしても、7年前より昔の事件については起訴することができないので、被害届を受理しても意味がなくなってしまうのです。
ちなみに殺人罪・強盗致死罪などは、例外的に公訴時効が存在しません。
しかし、公訴時効の存在するものに関しては特にできるだけ早く被害届を提出するようにしましょう。
警察に受理してもらえる被害届
前述の通り、被害届を無事受理してもらうためには、受けた被害が刑事事件の範疇となり得ることを示さなくてはならないのでした。
では、実際にはどのような被害届の書き方をすれば受理してもらえるのでしょうか?
実際に被害届を書く時には、以下のような点に留意しながら情報をまとめるようにしましょう。
いつ、どこで、どのような被害にあったのか?を詳しくまとめる
事件を時系列にそって、場所やその時の状況などをできる限り詳しく説明できるように準備しましょう。
また、相手との会話の録音や契約書、書類などがある場合には、すぐに提出できるようにしておきましょう。
どのような身体的・金銭的の被害を受けたのか?を明示する
暴力行為などにより身体的な被害を受けてしまった場合には、病院などの診断書があると良いです。
金銭的な被害を受けてしまった場合には、相手との契約書など被害にあった金額がわかる資料をできる限り用意するようにしましょう。
同様の被害を受けた被害者を把握する
1人が受けた被害が小さかった場合にも、同様の事件の被害者が多数存在する場合には、悪質な事件であると判断され、受理されやすくなります。
例えば、1人が急に知らない人間に手を触られただけでは警察が動いてくれない場合でも、同じ駅で複数の人が被害に遭っているとわかれば状況は変わってきます。
もしも被害者が自分以外にも多数いるとわかっている場合には、可能であれば他の被害者の方達と協力することをおすすめします。
また、被害額や被害者が多数存在する場合には、「集団訴訟」という手段を選択することもできます。
このような点に注意しながら被害届を書くことで、受理される可能性は格段に上がります。
まとめ
今回は受理される被害届はどのような被害届なのか?受理されない被害届はどのような被害届なのか?に注目しながら、被害届の書き方について詳しくご紹介しました。
被害届を書くときに一番大変なのは、被害を受けた内容がどのような法律に違反し、どのような犯罪にあたるのか判断することではないでしょうか?
被害届を書かなければならないときには、弁護士に相談することで、どの犯罪にあたるのかという法的解釈や、被害ごとの適切な書き方のアドバイスを受けることができます。
受理されやすい被害届を作成するためには、弁護士にご相談することをおすすめします。