資産があっても国選弁護人をつけることはできる?

刑事事件

国選弁護制度は、お金がない人のためだけの制度ではない!

国選弁護人は、お金がない人が、国費で弁護士をつけてもらう制度だと思っていませんか?違うのです。資産・資力がある人でも、国選弁護人に弁護してもらうことができます。

資産の有無で国選弁護人の選任手続が違うだけ!

憲法は、国選弁護制度につき、

「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。」(憲法37条)

として、資産の有無を問題としていません

これを受けて刑事訴訟法も、

「被告人は、貧困その他の事由により私選弁護人を選任することができないときは、裁判所に対し、国選弁護人の選任の請求をすることができる。」(36条)

とし、貧困は理由の一例に過ぎません。実は、被告人の財力の有無によって、国選弁護人をつける場合の選任手続が少し違うだけなのです。

国選弁護人の費用というのは、国が弁護人に対して支払うことなっています。

よって、資力が満たない人は無料で国選弁護士を利用できます。では、資力がない人の基準ですが、資産が50万円に満たない人です

資力がある場合でも国選弁護士は利用できますが、費用の負担を求められることとなります。執行猶予の場合は、負担を求められることが多いでしょう。

これは裁判所が判断します。

金額自体は、10数万円程度といわれていますので、一般的な刑事事件弁護士費用相場の50~100万円の私選弁護士よりはやすいのです。

重大事件などでは資産の有無は関係がない

まず、被告人の資力が全く関係しない場合として、必要的弁護事件があります。

これは弁護人がいなくては裁判を開けない事件であり、私選弁護人がいない限りは、資力にかかわらず、裁判所は、国選弁護人をつけなくてはなりません。必要的弁護事件は、

  • ①重大事件(死刑、無期、長期3年を超える懲役・禁錮)
  • ②争点が複雑な事件(公判前整理手続、期日間整理手続に付された事件)
  • ③裁判の手続を簡略化し、スピーディにする代わりに、被告人の利益が害されないように配慮したもの(即決裁判手続)

があります。

大金持ちでも、国選弁護を利用できる

それ以外の事件では、被告人の資力により、国選弁護人の選任手続が違ってきます。

  • (ア)資産(現金及び預貯金等)が50万円に満たない場合は、それを裁判所に申告すれば、国選弁護人が選任されます。
  • (イ)資産が50万円を超える場合は、弁護士会に対して弁護人の選任を申し出たけれど、弁護人となる弁護士が誰もいなかった場合であって、はじめて国選弁護人が選任されます。

大金持ちであっても、引き受け手がいなければ、国選弁護人がつくのです。あなたが50万円以上の現金を持っていても同じです。弁護料を払いたくなければ、無料で引き受ける弁護士がいない限り、引き受け手がいない場合として、国選弁護人がつくわけです。

勾留されている被疑者でも国選弁護人がつく場合がある

被疑者に対する国選弁護人は、憲法の要請ではありませんが、刑事訴訟法では、

  • ①重大事件(死刑、無期、長期3年を超える懲役・禁錮)
  • ②被疑者が勾留されているとき

国選弁護人をつけるとされています。手続は、被告人で必要的弁護事件以外の事件の場合と同じで、資産の有無にかかわりません。

裁判所が職権で国選弁護人をつける場合もある

未成年、高齢者など、必要がある場合は、被告人の意思にかかわらず、裁判官の職権で、国選弁護人をつけることもできます。重大事件で勾留されている被疑者についても同様です。

国選弁護制度は、公正な裁判のための制度

国選弁護制度は、金のない人のための制度ではなく、弁護を受ける権利を保障し、公正な裁判を実施するためのものです。

不公平だと思うかも知れませんが、有罪の場合は、国選弁護は有料が原則です。

被告人に費用を支払えないことが明白なときは、裁判所の判断で弁護費用を負担させないことになりますが、それ以外は、被告人に支払義務がありますから、不公平とも言えません。

タイトルとURLをコピーしました