刑事事件の加害者になってしまった場合に、心から事件を犯してしまったことに対する反省を相手に伝えたいと考えることがあります。
- 「この謝罪文を読んでいただいた時、相手がどのよう感じるか?」
という被害者視点に立って書く
相手の立場にたって考える。これが刑事事件の加害者側が持つべき視点です。
謝罪文と示談の関係
被害者と示談して損害を賠償することや謝罪文を書くことで、結果的には、告訴取り下げや不起訴、起訴された場合に量刑を軽くなり、有利に働く場合があります。
私選弁護人が事件の被害者に対して示談交渉を行う際に、加害者に手紙を書くように指示をすることもあります。
刑事事件の被害者に対する謝罪文の書き方ですが、書くべき事と、書くべきではない事があることを理解しておく必要があります。
謝罪文の役割
被害者が示談に応じないという意志が固い場合に謝罪文が重要な役割をもちます。
被害者と示談することが大事ですが、示談拒否の強い意志を持ち示談に応じてもらえないことがあります。
この場合、謝罪文が、被害者の気持ちが変わったときにすぐに示談交渉に入れるきかっけになることがあるので重要な役割を持ちます。
謝罪文の渡し方。刑事事件弁護士に依頼
ただし、被害者は、加害者やその関係者と直接会いたくないことが多いため、示談交渉は弁護士に依頼して行うことが通常です。
謝罪文を書いても、被害者に直接渡すの現実的ではありません。
被害者に謝罪文を渡したり、今後の示談交渉は、刑事事件を専門的に扱う刑事事件に強い弁護士に依頼するとよいでしょう。
謝罪文を書く上で忘れてはいけないこと
- 縦書きなのか、横書きなのか?
- パソコンで書いてよいのか?手書きがよいのか?
- 例文や見本、テンプレートがあるのか?
- メールで出してよいのか?郵送なのか?
- 件名、タイトルはどうするか?
- 拝啓、時候の挨拶入れるべきなのか?
など、体裁が心配になりがちです。ただ、謝罪文は自分のためではなく、相手に対する謝罪を伝えるものです。見本をそのまま書いても、読んだ人はすぐにそれがパクリであることはわかってしまいます。
よって、大事なことは、謝罪文に心を込めること、相手に対する配慮を忘れてはいけないのです。
謝罪文を書く4つの事
謝罪文に書くべき事ですが、
- 犯罪行為(被害者が受けた被害)を素直に認めること
- 被害状況や被害者が受けた気持ちを気にかけること
- なぜ犯罪に至ったのか(犯行の動機)
- 被害に対する具体的な弁済や賠償の方法
についての4点です。
言い訳をせず素直に認める事
一番最初に、犯罪行為の内容や加害状況を素直に認める内容を書きます。単に法律上の罪名や犯罪の内容(項目)を並べるのではなく、具体的に何をしたのかを簡潔にまとめるようにします。
「被害者なのだから犯罪の内容を知っているだろう」などと考えるべきではありません。
被害者の気持ちを理解しようとする
犯罪(加害)内容の次に、被害者が受けた被害の内容と被害者の気持ちを気にかけていること、反省していることを書きます。
被害者と会うことができずに、相手の気持ちが分からない場合があります。そのような場合でも、相手の立場になって事件の内容をイメージするようにします。もしも自分が同じ被害を受けたらどのように感じるだろうか、と想像してみるようにします。
犯罪を行った動機
犯罪を行った動機や経緯についてを簡潔に含めることができます。ここで注意すべき点は、犯罪行為の言い訳にならないようにすることです。他の人のせいにしたり、自己弁護するような内容にならないようにします。
ただし、被害者が事件のことを思い出したくないと感じているような場合は、犯罪の動機や理由は書かないようにします。
弁済方法や賠償の方法
最後に、犯罪被害者に対する弁済方法や賠償の方法を書きます。もしも示談を成立させたいのであれば、この部分が一番重要です。
自分が被害者のためにできることや、具体的な賠償金と弁済(支払い)方法を書きます。個々で注意すべき点は、お金を払いさえすれば問題はすべて解決できる、という主旨の内容は含めないようにすべきです。
お金を支払っても、被害者の受けた苦しみや悲しみが消えることがないことに留意する必要があります。
謝罪文に書くべきではない内容
謝罪文に書くべきではない内容ですが、自分の考えや感情を含める際に、相手の事を考えずに自己本位な内容にならないように注意すべきです。
- 当時は混乱しており仕方がなかった
- 生い立ちの事情
- 家庭の事情
- 困窮していた
- 不条理な事をされてむしゃくしゃしていた
- つい出来心でしてしまった
- 酔っていて記憶がない・理性が働かなかった
など、自分の立場を擁護・正当化するような内容は絶対に含めるべきではありません。
逆に相手の事を気にかけずに、自分が感じている謝罪の気持ちだけを一方的に押し付けるような内容にならないようにも注意をしなければなりません。
どのような内容を書く場合でも、常に被害者の受けた心情や被害についてをよく考えながら文章を作成するようにします。まずは、自己中心の考えではなく、相手の立場にたって反省することが大事です。
視点を被害者の方にして、この謝罪文をうけとったらどう感じるか、相手の立場に立つことが何より重要です。
書式についてですが、題名は「謝罪文」とし、2行目の先頭に「(相手の名前)様」を書きます。3行目以降に本文(謝罪内容)を書き、結びに、再犯を犯さないとの決意と共に、その下に日付と自分の名前を書いて押印します。