少年事件の三つの種類
家庭裁判所が担当する少年事件は大きく3つに分けられます。最も広く知られているのは、14歳から20歳未満の未成年に関する事件です。次は法令に抵触しているけどその時点では14歳未満であるため、犯罪を犯した扱いにならない事件になります。
未成年だけど不良と見なされる行為をしており、将来的に犯罪者になることが疑われる人物の事件が3つ目です。そのような区分を知っておくだけでなく、具体的な流れを把握しておくことも大切です。
まず犯罪を犯したことを疑われる少年は家庭裁判所に送られます。少年の身柄を拘束している間は、検察官が事件について調査を実施します。そのうえで検察官は事件についての書類を作成して送付しなければなりません。成人の場合と違って検察官の判断で不起訴にすることは認められていないです。そのため犯罪の可能性がある場合は送付することが義務付けられています。
家庭裁判所では、どのような処分を下すのかを決定するために審判を行うことになります。審判は刑事裁判の代わりになるものですが、成人を対象としたものと違う点が多いです。
特にプライバシーがしっかり守られていることが大きな特徴です。基本的に法定は非公開で実施されるので、関係のない人やマスコミなどが内容を知ることはありません。
審判に参加が許されている人物は非常に限定的です。裁判官や書記官が出席できるのは当然ですが、その他に参加できる人物は関係者に限られています。関係者に該当するのは少年やその両親、担当する弁護士などです。
ただし被害者が傍聴することを望む場合は出席を許される場合もあります。その他にも裁判官が許した場合に限って、いろいろな立場の人が出席することもありえます。どの場合であっても、興味本位で出席を望む人が許可されることはありません。
審判は60分前後で終わるケースが一般的です。その中で行われるやり取りは、基本的には通常の裁判と大差ありません。まず生年月日や名前などを質問していき、本人であることをチェックします。続けて黙秘権を行使しても構わないことを伝えるのが最初のステップです。
それ以降は少年ということを考慮した内容になっています。これから話し合う内容の概要を少年に伝えて、それに誤りがないことを確認してから本格的にスタートします。
続けて裁判官は少年に事件の内容について質問してきますが、それに至った経緯や原因などを重視します。そのうえで心情について尋ねることも多くあります。少年に質問するのはもちろんですが、両親にも心情や考えを尋ねることが少なくありません。
この後の更生の仕方などに言及することも多く、過去だけでなく未来にも重点を置いているのが大きなポイントです。弁護士が参加している場合は、そちらかも質問を投げかけるケースも見られます。
最終的には通常の裁判と同様に弁護士が考えを述べて、それを聞いたうえで裁判官が最終的な決定を告げます。
成人の裁判との差
このような流れだけを見ると、成人の裁判とほとんど差がありません。しかし裁判官の側には大きな違いが存在します。それは事前の情報を仕入れておくことです。
成人の裁判では基本的には事前の情報を持たずに裁判に臨みます。それに対して少年事件の審判では、鑑別所から受け取った報告書なども読んでから出席します。
その際に処分についても考えておくのが一般的ですが、あくまでも結論は弁護士や少年の意見を考慮したものになります。鑑別所とはいろいろな検査を行える施設であり、科学技術を用いた検証を行える設備などを備えているのが特徴です。
最終的に下される決定にはいくつかのパターンがあります。たとえば非行を行った事実がないと判断された場合は不処分という結論になります。成人の裁判でいうと無罪放免に該当するものです。この場合は、今後もこれまで通り生活を送ることができます。
更生の指導を受ける場合に下される決定として多いのは保護観察です。保護観察で済んだ場合は、施設に送られることはありません。すなわち自宅で日常生活を送ることが許可されている状態です。
ただし定期的に更生の専門家と会って指導を受ける必要があります。人によって期間は異なりますが、一般的には1年ほどで済むことが多いです。不処分と保護観察と比べて、少年院へ送られるパターンは深刻と考えられます。
自宅で生活しているだけでは更生できないと判断されるレベルの場合にとられる措置です。少年院に収容された少年は、日常生活への復帰を目指して矯正のための教育を受けることになります。さらに、これより重い結論として検察官に送り返すパターンが挙げられます。
非常に重大な罪を犯したことが明らかなケースや、審判の間に成人になった場合などに適用されることが多いです。たとえば悪意を持って相手を死亡させたような事件の場合はこのパターンに該当すると考えられます。今後は成人の裁判と同じ流れで進んでいきます。