強制性交等罪は旧強姦罪。何がどう変わったかをわかりやすく解説!

手錠刑事事件

強制性交等罪ってどんな罪のこと?

皆さんは、強姦罪という罪が昨年大きく改正されたことをご存知でしょうか?

100年ぶりともいわれる大きな改正であり、法定刑など重要な部分も変更されたことから大きく話題となりました。

刑事事件なんて自分には関係ないと思う方も多いかと思いますが、ご自身やご家族、友人が巻き込まれしまうこともあるため、法律がどう変わったのかを簡単に理解しておくことは大切です。

そこで今回は、強制性交等罪について解説します。

強姦罪→「強制性交等罪」に改正

刑法177条では、強姦罪というものが規定されていました。これをみてみると、「暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫(かんいん)した者は、強姦の罪」が成立し、「三年以上の有期懲役」が科されることがわかります。

女性をレイプしたら、3年以上の懲役が課せられることを示しているのです。

もっとも、この強姦罪は罪が軽すぎること、被害者を女性に限定していること等から現代の性犯罪の実情に合致しないという批判がありました。

そこで、以下の条文に変更されることになったのです。

刑法第177条(強制性交等罪)
十三歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いて性交,肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は,強制性交等の罪とし,五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し,性交等をした者も,同様とする。

厳罰化されたって本当?5つの変更点

先にご紹介した強制性交等罪ですが、具体的に何がどう変わったのでしょうか。以下が主に改正された5点となります。

  • 罪名が「強姦罪」→「強制性交等罪」に変更
  • 被害者を女性に限定していた点を撤廃
  • 「姦淫」の定義が広くなった
  • 法定刑が「3年以上の有期懲役」→「5年以上の有期懲役」に
  • 被害者の告訴なしに起訴可能に

以下、1つずつ内容を見ていきましょう。

罪名が「強姦罪」→「強制性交等罪」に変更

ご覧の通り、罪名が大きく改正されています。他の関連法(後述「3.性犯罪の関連法も改正。6つの変更点」)でも同様に変更されています。

被害者を女性に限定していた点を撤廃

旧強姦罪では、被害者は女性に限定されていました。

しかし、レイプの被害者は女性だけではありません。これまでは男性が被害者の場合は、罪の重い強姦罪で起訴することができませんでしたが、今回の改正で可能となったのです。

被害者・加害者ともに性別は関係なく強制性交等罪は適用されます。

姦淫の定義が広くなった

旧強姦罪では、膣性交を指す「姦淫」が必須でした。

しかし、今回の改正で「性交等」に変更され、肛門性交や口腔性交も含まれるとしたのです。

「性交等」であっても、個人の人権を侵害することは明らかであり、この点を軽視できないことからこのような変更となったようです。

これまでは、強制わいせつ罪として処理され刑罰も旧強姦罪に比べ軽かったことを考えると、重要な改正ポイントです。

法定刑が「3年以上の有期懲役」→「5年以上の有期懲役」に

旧強姦罪では、法定刑は3年以上の有期懲役でした。

しかし、今回の改正で5年以上の有期懲役に引き上げられたため、刑罰が重くなったといえます。

被害者の告訴なしに起訴できるようになった

旧強姦罪では、被害者の告訴(処罰意思の表明)なしに起訴することはできませんでした。

これは被害者の心情に配慮したためなのですが、逆に告訴が必要なことで被害者の人権が害されるとの批判があり改正に至りました。

以上が、強姦罪から強制性交等罪への主な改正点です。

性犯罪の関連法も改正。6つの変更点

旧強姦罪にかかわる他の法律も改正されました。

具体的には、準強制性交等罪、強制性交等致死傷、監護者わいせつ罪および監護者性交等罪が対象です。

これらの法律が以前と異なるのは、以下の6点です。

  1. 罪名の変更
  2. 被害者の性別を問わない
  3. 告訴なしの起訴が 可能
  4. 法定刑の引き上げ(旧準強姦罪、旧強姦致死傷罪、強制わいせつ罪)
  5. 集団強姦罪の撤廃
  6. 「監護者わいせつ罪および監護者性交等罪」の新設

以下、内容を詳しく見ていきましょう。

罪名の変更

準強姦罪は「準強制性交等」に、強姦致死傷罪は「強制性交等致死傷」に、それぞれ変更となりました。

被害者の性別を問わない/ 姦淫が「性交等」に変更

準強制性交等、強制性交等致死傷ともに、被害者の性別は関係なくなりました。また、姦淫が撤廃され、「性交等」に変更されたのも強制性交等罪と同じです。

告訴なしの起訴が 可能

準強制性交等、強制性交等致死傷、強制わいせつ罪、監護者わいせつ罪および監護者性交等罪、などの性犯罪関連法につき、告訴が不要となりました。

理由は、強制性交等罪と同じです。

法定刑の引き上げ(旧準強姦罪、旧強姦致死傷罪)

以下の通り、法定刑が引き上げられています。

《準強制性交等罪(旧準強姦罪)》
3年以上の有期懲役→5年以上の有期懲役
《強制性交等致死傷罪(旧強姦致死傷罪)》
無期または5年以上の懲役→無期または6年以上の懲役

集団強姦罪の撤廃

これまで集団強姦罪というものがあり、2名以上でレイプした場合には無期または6年以上の懲役が科されていました。

しかし、今回の改正ではこの条文自体が撤廃されることになり、今後は強制性交等罪にて罰せられることとなりました。

「監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪」の新設

18歳未満の児童を監護する立場にある親や家族が、その立場を利用してわいせつ行為を行った場合には、「6ヶ月以上10年以下の懲役」、性交等を行った場合には、「5年以上の有期懲役」で罰せられます。

暴行や脅迫、酩酊状態等がない場合でも起訴できるという点が、これまでと異なります。

以上が、変更された6点となります。ちなみに改正点とは異なりますが、強制性交等罪と準強制性交等罪の適用の違いは、加害行為の態様や被害者の状態にあります。

被害者が暴行・脅迫を受けレイプされた場合には強制性交等罪です。

一方、暴行・脅迫がない場合でも泥酔状態、熟睡状態等にあり正常な判断能力を欠いている状態や、物理的・心理的に抵抗ができなくなっている状態を利用してレイプをした場合には、準強制性交等罪が成立します。

LGBTQに対する配慮も。厳罰で執行猶予は原則つかなくなる?

最後に、上記の変更点以外で知っておきたいポイントをご説明します。

LGBTQに対する配慮

強制成功等罪への改正により、被害者が女性でない場合でも適用対象となることが明らかになりました。

これは男性被害者への適用を認めるためでもありますが、性の多様化によりこれまで通りの「男性と女性」という構図だけでは対処できなくなっていることも背景にあります。

男女という文言もなく、「者」という文言で定めた点は、LGBTQへの配慮の表れとも考えられます。

また、法制審議会ではトランスジェンダー(性同一性障害)の方で、性別適合出を受け形成された膣、陰茎においても強制性交等罪が成立することも明らかにしています。

もっとも、物の挿入によるレイプなどは強制性交等罪の対象とはならないため、別の問題は残されています。

強制性交等罪では、執行猶予が原則つかない

そして今回の改正では、性犯罪への厳罰化が顕著に表れています。

強制性交等罪(旧強姦罪)は、3年から5年に下限が引き上げられているため、原則として執行猶予がつかないこととなりました。

酌量減刑による執行猶予はありえますが、原則としてつかないというのは大きな意味があるでしょう。

性犯罪に対する量刑はこれまでよりも厳しくなることが予想できます。

性犯罪関連でお悩みの場合は、弁護士に相談を

性犯罪は人を身体的にも精神的にも深く傷つける行為であるため、厳罰化は致し方ありません。

もしあなたやご家族やこのような犯罪を行ってしまった場合には、できるだけ早く対処をすることが大切です。

当事務所は刑事弁護の実績も数多くあるため、お役に立てることが必ずあります。

強制性交等罪等の成立などで疑問、お悩みをお持ちの方は当事務所までご相談ください。

ご自身や家族だけで抱え込まず、プロに相談することが更生への第一歩となります。

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