「裁判にかけない」という決定の不起訴処分にも実は、いくつか種類があります。
そこで今回は、この不起訴処分の種類のうち、疑問が多い「起訴猶予処分」について解説いたします。
起訴と不起訴の違い|不起訴の種類とは?
皆さんは、起訴と不起訴の違いについて説明できますか?「なんとなくわかっているけれど、説明するのは難しい…」という人が多いかもしれませんね。
簡単にいうと、起訴と不起訴の違いは「刑事事件で裁判にかけられるかどうか」という点で大きく異なります。
裁判にかけて裁判官に処分を決定してもらいましょうといえるのは、検察官です。起訴できるかどうかの権限は、警察官ではなく検察官が握っています。
警察官は刑事事件について捜査をする権限はありますが、起訴を決める権限はもっていません。
起訴が行われると、98%程度の確率で有罪となります。
これは検察官がきちっと調べ上げ、有罪にできる証拠があると判断した場合に起訴を決めるためです。
有罪になると執行猶予がついても前科がついてしまうため、刑事事件の弁護活動では無罪または不起訴処分を勝ち取ることが重要となります。
不起訴理由の起訴猶予処分の意味とは?
先にご説明した通り、不起訴処分にはいくつか種類があります。
不起訴の理由としては主に3つありますが、一番多い不起訴の理由は、「起訴猶予処分」です。
起訴猶予処分とは
起訴猶予処分とは、「犯人の性格や年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況」(刑訴法248条)から起訴する必要がないと判断したときに行う不起訴処分のことです。
簡単にいうと、「起訴しても有罪にできるけれど、示談が成立していること、反省していること、罪が軽いこと、年齢が若いこと等の事情を考慮して、裁判はやめておきましょう」という判断です。
このような判断にかんしては、すべて検察官が行います。
実際の捜査資料などをみたり、被疑者から話を聞いたりなどして、逮捕から2週間〜1ヶ月程度で処分を決定します。
これ以外にも、「嫌疑なし」という理由と、「嫌疑不十分」という理由があります。嫌疑なしは犯罪事実がないことが明白である場合、つまり無罪とほぼ同義です。
嫌疑不十分は、証拠が足りない場合の不起訴の理由となります。
もっとも、この2つの理由で不起訴処分となるのは1割程度といわれているため、不起訴処分の理由はほぼ起訴猶予処分といっても過言ではないでしょう。
なぜ検察官が「起訴猶予処分」を好むのかについては明らかではありません。
しかし、後述するように、のちに再犯となった際に起訴猶予処分となった犯罪についても考慮できるからかもしれません。
この点で、起訴猶予処分は無罪とは異なるといえるでしょう。また、無罪は裁判での判決が前提となる点でも異なります。
ちなみに、起訴猶予も起訴猶予処分も基本的には同じ意味と考えていただいて大丈夫です。
起訴猶予は無罪と異なる|前歴、捜査の可能性が残る
では、起訴猶予処分になると、将来の生活になんら影響はないのでしょうか?
起訴猶予処分になれば、基本的に通常通りの生活に戻っていたけます。
起訴猶予になったということは、示談が成立していることがほとんどですので、示談金も支払い済みのはずです。
被害者から損害賠償請求で困る等の問題もないでしょう。
もっとも、事件を起こす前と全く同じとはいえない事情もあります。
具体的には、①前歴がついてしまうこと、②後日捜査の可能性が残ることが挙げられます。
前歴とは、過去に捜査機関の捜査を受け被疑者となった事実の記録のことです。
基本的には、逮捕された段階で前歴が残ると考えられています。
もっとも、前歴があるからといって、これが世間一般に出回ることはありません。そのため、就職に不利になるなどのケースはないので安心してください。
ちなみに、前科は起訴され有罪判決を受けた場合につくものですので、別物です。
また、起訴猶予処分の場合は、「有罪にできるけれど総合的に考慮して起訴しない」という検察官の判断ですので、完全無罪というわけではありません。
そのため、新たな有罪の証拠が見つかった場合や、不起訴処分となった後に被害者を脅迫したなどの問題があれば、後日再捜査が開始され起訴されてしまう可能性はあります。
さらに何か別の犯罪をおかせば、起訴猶予処分となった前歴もチェックされるため、情状は悪くなってしまいます。
したがって、全く真っ白の記録になるということはありません。
しかし、問題なく通常通りの生活をしていれば、通常は前歴が問題となることや、再捜査が開始されることはありません。
起訴猶予処分になる方法|反省と示談が重要
では、刑事事件を起こしてしまった場合、起訴猶予処分にする方法はあるのでしょうか?
起訴するかどうかの判断は、検察官の専権事項であるため、必ず起訴猶予処分にできる方法はありません。
また、なぜ起訴猶予になるのかについて明確な基準は残念ながらありません。
もっとも、情状を考慮して、起訴しなくとも被疑者が社会復帰できるかどうかという点や社会秩序を乱さないかということに重点をおいています。
そのため、十分な反省を示し、被害者がいる場合には示談を成立させるなどの弁護活動が有効となります。
仮に逮捕されてしまった場合には、できるだけ早期に示談交渉を始め、示談を成立させることが検察官の判断に影響するといえるでしょう。
起訴猶予処分を勝ち取りたい方は、弁護士に一度ご相談ください。