外出の自粛が求められる中、外出せずに自宅の庭や屋上でできるバーベキューを楽しむ方が増えています。
しかし、家の庭や屋上でバーベキューを楽しんでいたら、近隣住人から「煙や臭いで迷惑だからやめてほしい」と注意されたという方もいるのではないでしょうか。
バーベキューをすれば、どうしても煙も出ますし、臭いも周囲に広がります。家族や友人が集まって騒いでしまうこともあるかもしれません。
しかし、バーベキューを楽しんでいた方からすれば、「自分の家の敷地内でのバーベキューなのにダメなの?」と疑問に思われますよね。
そこで、この記事では、家の庭・屋上でのバーベキューで問題になりがちな騒音や煙、臭いトラブルについて解説します。
自宅でのバーベキューは違法か
自宅でのバーベキュー自体は原則として違法ではない
住宅街における自宅の庭や屋上でバーベキューをすること自体は、違法ではありません。
また、自宅の敷地内であればバーベキューをすることについて誰かから「許可を得ることも不要」です。
そのため、原則として自宅でのバーベキューは自由に楽しむことができます。
バーベキューの騒音が限度を超えると違法性を帯びる可能性
ただし、バーベキュー騒音がある一定の限度を超えており、他人に損害が発生した場合には、民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。
バーベキューの騒音については、社会通念上耐えることができる限度までは受忍限度の範囲内であるとして、違法性は認められません。しかし、騒音の基準値を超えていたり、社会通念上受忍限度の範囲を超える場合には、違法性が認められます。
最近は、「道路族がうるさい」といって、通報されるケースも少なくないので気を付けたほうが良いでしょう。
バーベキューの煙、臭い
たとえば、頻繁に庭でバーベキューをして大量の煙や臭いが発生し、バーベキューの煙で洗濯物がひどく汚れてしまったりした場合には受忍限度を超えていると判断される可能性があります。
とはいえ、よほどひどい臭いや煙でなければ受忍限度を超えていると判断される可能性は低いと考えられます。
公道や公園でのバーベキュー・たき火との比較
一方、公道や公園、河川敷、海浜など公共の場におけるバーベキューは、自治体などの管理者が禁止していることがあることを覚えておく必要があります。
また、管理者がバーベキューを禁止していない場合であっても、バーベキューは各種法律に定められている「たき火」にあたると考えられるため、たき火と同様の規制を受けます。
軽犯罪法違反の可能性
軽犯罪法1条9号では、「相当の注意をしないで、建物、森林その他燃えるような物の附近で火をた」いた場合、拘留又は科料に処すことが定められています。
そのため、相当な注意をしないで建物や森林など、燃え移る可能性がある物の近くでバーベキューをした場合には、軽犯罪法違反となる可能性があります。
ここでいう相当な注意とは、通常人に一般的に期待される程度の注意を払わないことをいいます。
たとえば、バーベキュー後に火の後始末をしないで放置した場合などは相当な注意をしたとはいえない可能性が高いです。
都市公園法違反の可能性
都市公園法は「公衆の都市公園の利用に著しい支障を及ぼす怖れのある行為」(都市公園法11条4号)を禁止しており、この行為には公園管理者が指定した場所以外の場所でたき火をすることも含まれます(都市公園法施行令18条3号)。
公園管理者が指定した場所以外でたき火をすると、10万円以下の過料が科せられるため、注意が必要です。
公園の案内にしたがって適切な場所でバーベキューをするようにしましょう。
消防法違反の可能性
消防法は、たき火を直接禁止しているわけではありません。
しかし、消防長などから火災の予防について危険があると判断されて、たき火行為の禁止や消火準備を行うことを命令されたにもかかわらず、それに従わなかった場合には、30万円以下の罰金または拘留に処せられます((消防法3条1項1号、消防法44条1号)。
したがって、公道や公園でのバーベキューであっても、消防長などから火災の危険があると判断されてバーベキューの禁止や消火準備を命じられた場合には、その命令に従う必要があります。
廃棄物処理法違反の可能性
廃棄物処理法では、一定の場合を除いて廃棄物を焼却する行為が禁止されています(廃棄物処理法16条の2)。たとえば、野外で廃棄物をドラム缶で焼却したり、直接地面で焼却したりすることがあげられます。
ただし、たき火のように「日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの」については例外として認められています(廃棄物処理法施行令第14条5号)。
公道や公園でのバーベキューについても、「日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの」にあたる可能性が高いため、基本的には廃棄物処理法違反となることはないと考えられます。
しかし、バーベキューであっても近隣の生活環境への配慮は必要とされており、悪臭や煙が出ることによって近隣住民から苦情が寄せられる場合には、自治体から指導が入ることもあります。
なお、例外にあたらないにもかかわらず野外焼却を行った者は、5年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科せられます(廃棄物処理法25条1項15号)。
庭でのバーベキュートラブルQ&A
① Q. 屋上でバーベキューしたら迷惑だと警察に通報された。この場でバーベキューをやめる義務はありますか?
A. 自宅の屋上でも庭でも、バーベキューは基本的には違法ではありません。
そのため、上述のような法律に違反していなければ、警察に通報されたとしても、警察から注意を受けるにとどまると考えられます。
しかし、近隣住民が警察に通報するということは、よほどの騒音や煙、臭いが出ていた可能性もあります。
警察に通報されたからといって必ずしもバーベキューをやめなければならない義務があるとはいえませんが、ご近所付き合いを考えると、騒音や煙、臭いができるだけ出ないように工夫したりして近隣住民への配慮は必要になってくるといえるでしょう。
②Q. 庭でバーベキューをしていたら、お隣の住民から「洗濯物に煙や臭いがついた」と言われてお金を要求されました。この場合お金を支払う必要はありますか?
A. 洗濯物のクリーニング代もしくは洗濯物の代替品購入費用の限度で損害賠償請求が認められる可能性があり、その場合はお金を支払わなければならないこともあります。
上述の通り、自宅の庭でのバーベキューは基本的には違法ではありません。しかし、バーベキューの煙や臭いによって何らかの損害が発生している場合には、一定の要件を満たせば民事上の不法行為として「損害賠償請求をすることが可能」です(民法709条)。
しかし、この損害賠償請求が認められるためには、損害の程度が受忍限度を超えていて違法であるといえなければなりません。受忍限度とは、社会通念上我慢すべき限度のことをいい、被害の程度、性質、バーベキューの態様などを総合的に考慮して判断されます。
たとえば、煙や臭いがあまりにもひどく、バーベキューが何度も頻繁に行われて洗濯物がひどく汚れてしまったというような場合には、受忍限度を超えていると判断される可能性があります。
他方、バーベキューは1回しか行われておらず、煙や臭いもそれほどでていなかったという場合には、受忍限度を超えるものではないと考えられます。
また、仮に受忍限度を超えるとして違法性が認められたとしても、損害賠償請求で認められるのは金銭賠償のみです。そして、この金銭賠償が認められる損害額は、その不法行為がなかったならあったはずの利益状態と、不法行為を受けた現在の利益状態との差額をさします。
つまり、洗濯物に臭いや汚れがついたとしても、その汚れを落として元どおりにするように請求することはできません。
洗濯物についた臭いや汚れを取るためにクリーニングに出したのであれば、そのクリーニング代が損害となりますし、クリーニングができない場合には代替品を購入した費用が損害となります。
代替品といっても、新品の額ではなく、中古品の相場を調べてその金額を弁償することになります。一般的な衣服やタオルであれば、中古品になればかなり価値は下がるため、弁償すべき額としては低額になると考えられます。
したがって、お隣の住民から「洗濯物に煙や臭いがついた」と言われてお金を要求されたとしても、バーベキュー自体の違法性が認められる可能性は低いですし、認められたとしても支払うべき額はわずかであると考えられます。
まとめ
以上のように、自宅の庭や屋上でのバーベキューは、基本的には違法ではないので、自由に楽しむことができるものです。
ただし、近隣住民からは苦情が出される可能性もありますし、ひどい煙や臭い、騒音が発生している場合には違法性があると判断される可能性もありますので、近隣の環境への配慮は欠かさないようにしましょう。